膵臓癌に対する免疫療法

今月の論文紹介

皆さんは、膵臓癌に対する免疫療法にどのようなお考えをお持ちでしょうか。
私の患者さんへの対応や、現状の免疫療法について2つの論文を紹介してみます。

免疫療法は、ざっくり言えば人体から取り出した免疫細胞(NK細胞、樹状細胞、Tリンパ球など)を活性化させ人体に戻す方法、癌が人体の免疫機構を回避することを阻害する方法などがあります。
後者は免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブなどが代表的ですね。


学会からは、汎用的には推奨しない方針が出ています。私もそうですが、周囲の膵臓や消化器専門医からのイメージは現状ではあまりよくありません。原因の1つは、質の高い研究で治療効果が証明されていないのに、自由診療として課題に広告されていることをネット上で見かけるからでしょうか。
免疫療法の理論は、将来性があるものとして理解できます。しかしその理論に加えて、「縮小効果がある、再発予防になる、副作用はない」などと現状で提示してしまうことは、藁にもすがる思いの担癌患者さんの気持ちに、過剰に作用してしまう懸念があると思います。そして免疫療法中の患者さんに体調不良が起こった場合の対応も、免疫療法を行っている施設ではなく、大抵は総合病院で診てもらって下さいという方針になります。免疫療法はまだ研究段階ですので、治療有効性だけでなく体調悪化時の研究を並行して行われていない施設が多いということも、専門医が中途半端な印象を抱いてしまう要因と思います。

では、私の実際の対応についてです。
時折免疫療法はどうですかと患者さんから尋ねられます。私は、現状でのエビデンスを考慮し「質の高い研究での有効性の証明は乏しいこと、そして費用や副作用などの点から学会からは非推奨であること」を説明した上で、それでもやりたいという患者さんへはそれが叶うように迅速に紹介資料を作成するようにしています。なぜなら、抗腫瘍効果はなくても、何か治療をしているということの安心感(打つ手がないという絶望感)に対しては有効かもしれないと思うからです。気持ちが前向きになれば、普段の生活にも光が指すかもしれないと思うのです。趣味を楽しむ、旅行へ行く、家庭での雰囲気がよくなるなど、QOLに影響するかもしれないという期待があります。そして、やるのであれば効いてほしいという願いもあります。もちろん、そのために推奨するということはなく、現状では専門医として非推奨の立場です。

上の2つの論文は、総説ですが、どちらも免疫療法単独での効果はないことを述べています。
併用療法や将来的な期待についても述べられていますが、現状ではまだ「期待」に留まります。