さあ、臨床研究を始めよう(前半

2022年10月20日

と言われたら何から手を付けますか?大きく分けて7つのステップがあります。7つも!?と驚く必要はありません。ステップによっては院内の臨床研究センターがけっこうやってくれますし、臨床研究センターがなくても独学でできていきます。

統計を身につけるには年の単位は掛かりますが、人間は普遍的に向上心を持ちます。統計に踏み出せば、長く向上心を満たし続けることができます!ついでに研究や論文への理解が深まり、臨床能力も上がるんです!統計は超お買い得な商品です

今回の項は、
RJ先生が作成したスライドを軸に、
私が受けているオンラインサロンのSRWS-PSGの講義内容と、
いちばんやさしい医療統計という本、で構成しています。

では本題。

目次です。まずは①臨床研究の全体像から。
まずは全体像を眺めてください。

①リサーチクエスション(RQ)を発案したら、②基本設計図を作ります。Wordでも紙でも書き出してみましょう(次のスライドで解説します)。③その基本設計図を基に研究計画書を書きます。④それを倫理委員会に提出し、⑤承認が下りたらデータ収集を開始し、⑥解析して、⑦発表です。

私は、基本設計図を書いている段階で論文を書き始めます(とくにIntroductionとMethod)。すると研究計画書で記載すべき情報がかなり集まります。そして後ろ向き研究では倫理委員会の承認前にデータ集めてたりします。本当はだめなんでしょうが、データ集めたって発表しなければ倫理的に問題はありません!きっと笑 だって自分のうちに秘めてるうちは個人情報の問題もないですからね。前向き試験ではだめですよ笑

こんな感じで臨床研究の1サイクルが早くなると、複数の臨床研究を並行できるようになります。

これが基本設計図のステップです。臨床研究の全体像と同じで7つのステップです。
心配しないでください!ほとんどの方は最初は後ろ向き研究しかできないです。1とをやったらあとはほぼ自動です。

まずはPICO、またはPECOと呼ばれるものを知りましょう。
IはIntervention(介入)、EはExposure(暴露)で研究内容によってどちらかを選択します。

PICOの意味

具体例:肺癌と喫煙の関係を調べたければ、こんな感じに設定しよう。
喫煙って本当に肺癌に関係しているの?っていうCQをこのようにPECOに落とし込むことで自分の頭を整理できたり他人に伝える有用な手段となります。
入院中の高齢者と骨折の関係を調べたければこんな感じに。
テーマに合致するpatientを集め、それをまだ有効性または有害性が分かっていない治療をする群(I)、そして標準治療の群(C)に分けます。そしてどんな結果を見たいか(O)を決めます。IかEかは、治療介入がIで喫煙や飲酒などの曝露がEです。言葉の問題。

ここで作ったPICOが妥当なものがを判定しましょう。FIRM2NESSという語呂のチェックリストを使います。

まずは左の絵を眺めてください。FIRM2NESSは9つからなるチェックリストで右に9つ列挙しました。赤文字がとくに大事だと言われていますが、自分で割と簡単に調整できるのは、Feasible(実現可能性)、Relevant(目的とする対象にとって大事な研究になり得るか)、Measurable(測定できる≒他の誰かが検証することもできる) 、Novel(新規性)、Ethical(倫理的に問題ないか、突拍子もない治療ではないか)、Specific(どのような対象を適応とするのかをしっかり決めること:PICOをしっかり作ること)あたりですかね。
RJ

RJ先生:

よく「このリサーチクエスション(RQ)は新規性があるの?」とか指導医に聞かれることが多いが、 このようにみてみると、新規性(Novel)は9つの要素の1つに過ぎない。 Ethicalが重要なのは言うまでもないですが、 それ以外では特にRelevantやMeasurableは大切かもしれません。 Relevantは「切実な」とか「意義深い」とかの意味があり、簡単に言うと診療現場で重要か否かということです。 つまり、臨床研究の価値を左右するといっても過言ではありません。 要はどうでもいいことには時間とお金をかけてやるなよっていう意味! Measurableは「測定可能」という意味ですね。 施設や検査者間で測定値にばらつきが多ければ、その結果は当てにならないですよね。

ではもう少し話を進めましょう。さっきまでは、

この全体像の基本設計図という以下のステップで、

1番目の疑問を構造化するというステップを解説していました。長々話しましたが慣れればさっとできるようになります。
さて次は2番目です。2は、次で説明するPICOまたはPECOを作ってから、似たようなPICOの既報と比較をします。既に分かっていることを調べるステップです(同じことをやっても意味がないので)。「既に分かっていることと、まだ分かっていないこと」をそれぞれ知ることで、自分の臨床試験を意味のあるものにデザインできます。ここで重要なのが「検索」です。
(私は検索力に自信があるとは言えませんが、ブログでもPubMedの検索式というページを設けていますので、気になる方はいつでもいいのでチェックしてみてください、)

ではさっそく、まずは臨床研究をやるための"検索に関わる全体像"を提示します。

順に解説しますね。
まずは左半分を見てください。RQを思いついたらPICOを作りました。そして分かっていることいないことを検索もできたとします。同じRQが既報になければ基本設計図の3番目に進めます(先ほども言いましたが、3〜7番目のステップは最初は臨床研究センターにやってもらうくらいの軽い気持ちでいいです!最初から全部背負い込もうとすると挫折するリスクが高くなります。)。
同じRQであれば、最初は変更を考えてください。それができなそうならば既報の同じRQの研究よりも、デザインや症例数などでそのRQのエビデンスレベルが上げられるかを考えましょう。それも無理なら別のRQを考えましょう。(RQを作ってそれを実際に研究して発表することを繰り返すと、自然と実現可能なRQを思いつくことが増えてきます。有効なRQを作るという単純なことすら訓練すれば能力が上がります。)

次は右半分です。"検索"のところで何をやっているかを図解したものです。

まずは発見的検索。今回の研究のキー論文になりそうなものを3、4つ見つけておきます。その際は、1つの研究をした論文(一次論文)でもいいですが、複数の研究をまとめたレビューまたはシステマティックレビューの論文(二次論文)を含めておくと、擬似網羅的な安心感があります笑
さらにそれらの本文を読んで、役に立ちそう引用があればさらに検索しておきます。

だいたいはこの段階で必要な情報はほぼゲットできていて、論文も書けちゃいます。しかしガイドラインに引用されそうな質の高い研究や、見落としが許容されないような論文内容があれば系統的検索で見落としがないことを提示することになります。
そこで系統的検索を行います(イラストの右下部分)。ここで必要になるのが検索式ですね。検索式をPubMedに登録しておくと、新しく該当する論文が出版された際には自動配信メールで知らせてくれます(検索式の項)。

発見的検索または系統的検索の段階が済んだら以下のことをします。

PICOが被っていたら次のようなことを考えてみよう。

ちなみに、介入研究ではなく観察研究であっても一流誌に載ります。どういったものが採用されるのかもデータがあります:

既報と比べて、研究に含める標本の特徴を変える(P)。
暴露や治療を変える(IかE)。
アウトカムを変える(O)。
なんていうのが編集部からは採用され易い、または研究者がやり易い項目になります。

ではあと少しだけ続けます。残りは、今はさっと眺めるだけでいいです。アウトカムを決めれば統計解析方法も決まるということを伝えたいだけです。

はい、ということで今回はここまでにします。今回の話は2部構成にしますので後半に続きます。次の後半パートは、なぜ臨床研究をやるのか/研究デザインの基本的なことです。
長くなりましたが、お疲れ様でした。今回の話をおさらいとして俯瞰しておきます。

この全体像の2番目の基本設計図が以下のイラストの流れです。

RJ

RJ先生:
「臨床」と「研究」の二択のうち一つしか選べないのなら「臨床」を選ぶと思います。ただ、研究や学術をすると臨床が深まるのは間違いないですし、着眼点もより鋭くなるかと。要は臨床を極めるツールとして研究や学術は大事な要素なのかなと思います!

2022年10月20日

Posted by ガイドワイヤー部長