膵癌によるネフローゼ症候群

2021年7月6日

悪性関連のネフローゼは、膜性腎症が有名ですね。

さっそく症例を提示します。

80代男性の方で、腹痛と浮腫を主訴に受診されました。
尿蛋白の7g/gCrを筆頭に、ネフローゼ症候群としての臨床所見が明らかであったために、腎臓内科にて精査が行われました。
腎生検を行い、光学顕微鏡だけでなく電子顕微鏡でも所見を確認し、微小変化型の診断になりました。


しかし、2次性ネフローゼの可能性を考慮して同時並行で進めていたスクリーニングにて、膵臓癌が見つかりました。

PubMedなどで検索しても、膵癌による微小変化型ネフローゼは報告がほぼありませんでした。
これはPublication biasなどの可能性が大いにありますが、腎臓内科の先生方でも経験がないようでした。
しかし無関係とは言えず、膵臓癌の治療でネフローゼまでも改善する可能性があったため、腎保護目的のARBと浮腫改善のための利尿剤を導入した上で、原発性微小変化型ネフローゼ症候群ではなく2次性微小変化型ネフローゼ症候群として化学療法(1st lineはGnP)を開始しました(本人の都合で化学療法開始が少し遅れています)。

経過は、ARB導入中も上下していたタンパク尿は、化学療法開始後に順調に低下し寛解。認容性の問題からGnPからS-1ベースに代わってからも寛解を維持しています。
この間、化学療法の抗腫瘍効果はPR〜SDでした。

この時点で、悪性関連微小変化型ネフローゼの診断基準は3つ満たすことになり、ほぼ確定となりました。

PubMedで、『MCD malignant』『MCD adenocarcinoma』を検索ワードとして調べらるだけの悪性関連微小変化型を調べてみました。その結果を載せておきます。悪性関連のものは稀ですが、リンパ腫が多く報告されていました(悪性リンパ腫はcase report以外にも多数例で検討している文献が複数ありました)。

治療は、原発性微小変化型としてステロイド治療をするよりも、化学療法を導入した方が予後はいいとされていました。意味は同じですが、化学療法無効例も予後は悪かったようです。

ちなみに、成人におけるネフローゼの15%が微小変化型のようです。
その中で2次性は、悪性腫瘍、薬剤(NSAIDsなど)、感染症などとの関連が報告されていました。

さいごに寛解と再発の基準も記載しておきます。
寛解の基準は、浮腫の消失、血清アルブミンの正常化(≧3.5g/dL)、蛋白尿の顕著な減少とされています。
成人の場合、完全寛解はタンパク尿が0.3g/日未満、部分寛解はタンパク尿が3.5g/日未満で50%減少した場合です。
タンパク尿の減少を達成するためには、成人の場合、数ヶ月間かかるようです。
再発の基準は、成人では大量のタンパク尿(3.5g/日以上)が再発の基準とされています。

悪性関連のネフローゼかどうかは、寛解や再発が診断基準に入っているので、治療を開始しないと関連性を判断するのは難しいですね。


余談ですが、悪性関連ネフローゼは膜性腎症が有名ですので、膜性腎症も調べてみました。

まずは悪性に限定せずに、2次性膜性腎症として。
2次性は、膜性腎症全体の30%にあるようですね。

続いて悪性関連に限定したものですが、微小変化型とちがい膜性腎症全体の10%とそこそこ多くあるようです。
また、微小変化型と逆で膜性腎症は固形癌が多いようですね。