急性膵炎 ガイドライン2021をかいつまむ

2022年8月3日

皆さん、急性膵炎は得意でしょうか。
アルコール性や胆石性でないかった場合の原因検索に苦手意識がありませんか?
またできる治療選択肢が少ないがゆえに、重症膵炎で増悪する人を前に歯痒さを覚える方も多いと思います。しかし有効な選択肢を知れば、自信を持ってやれることはやったと言えると思います。

全例治せるわけもなく、、、
重症の中でも、CTgradeではなく予後因子の方がひっかかると死亡率が高いですね。
一応載せておきます。
こちらも。
画像はガイドラインから抜粋です。

続いては重要な原因検索。

急性期に特異的な介入をする余地がある成因は、胆石性、高TG、薬剤性、高Caくらいですね。
右の写真は、膵炎を診療する際に原因を見落とさないように書く私のカルテです。

ではここからは、ガイドラインの初期診療を中心とした解説/抜粋になります。
下のバンドルに書いてあることをやればいいんですが、まずはこれを眺めて頂いて、以下に解説していきます。

このガイドラインのエビデンスとしてよく出てくるForest plotをごく簡単にだけ解説しておきます。

私はこのように、重症膵炎の輸液量を決める際には、全身の臓器血流を保つための血管内容量について考えるようにしています。
重症膵炎では輸液を迷うのは胸水とAKIですが、例えば胸水があるから血管内にも溢れているとは限りません。

しかし血管内容量を単一で知る強力な指標はないため、複数の指標が総合してどちら向きのベクトルかで考える様にしています。
溢水の可能性を示すものは右の円、脱水の可能性を示すものは左の円です。ICUに入室した場合は利用できる指標が増えます。
胸水のためだけにマイナスにし過ぎると、NOMI、脳梗塞、TypeⅡMIなどの臓器虚血が問題になります。
しかし敗血症に関する報告では、過剰輸液は予後を悪化する報告もあります。

そのため適切な血管内容量を考察し、前日のOUTや維持量概算値と比較して輸液を増やすか減らすか、減らすならラシっクスを加えるかを決めていきます。
しかし輸液量は、やる前に明確な答えは出せないため、投与量決定前の考察と同様に重要なことは、事後の検証です。毎日。
重症膵炎後のWONで、ネクロセクトミーをやった症例です(少し以前の症例なのでAXIOSは使用していません)。
WONの中に内視鏡で入って、黄白色の壊死物質を掴んでいるところです。

以上が、急性膵炎診療の全体像です。
この中から成因、重症度に合わせて選び出していく感じです。

初療時は、

①重症度を判定しよう

②成因を考えよう:とくに胆石と高TG

③積極的輸液、鎮痛、早期栄養を考えよう

そして短期合併症としてACS、WON、仮性動脈瘤、門脈血栓に留意しよう。

また長期合併症として、重症者と飲酒者ではDMと外分泌機能不全の説明をしておこう。

2022年8月3日

Posted by ガイドワイヤー部長