膵NEN② 〜内科から外科治療まで〜

2021年6月19日

治療も選択肢が多いです!が、まとめます!

まずは内科的治療の話です。

全体像の提示から。

その中で、単純な症状緩和から。
機能性NEN(NETでもNECでも)の、ホルモンの症状があればランレオチドでよさそうですね。
インスリノーマでは使用する薬剤が変わります。

次は、腫瘍抑制を狙う場合ですが、どの薬をどう使うか整理されていますでしょうか?
これに対する1つの答えとなる報告があります(Ikeda M, et al. pancreatlogy 2020)。
肝転移の量が多いこと/Ki-67陽性率が高いこと(=腫瘍の勢いが強い)ものほど右上のものを使うようにするんですね。

Optimal strategy of systemic treatment for unresectable pancreatic  neuroendocrine tumors based upon opinion of Japanese experts - ScienceDirect

ただしこれらはNET G3までの話で、NECになると肺小細胞癌に準じてプラチナ系を軸とした化学療法ですね。

これらの副作用も提示します。

薬物以外の治療法は、TACE、RFA、放射線治療です。
とくには肝転移に対して施行を検討すると思います。多血性腫瘍なためTACEの有効性が高いとされ、転移が少数ならRFAも有効です。しかし外照射としての放射線治療の有効性はエビデンスに乏しいです。骨転移への外照射は他の固形癌と同様に有効です。

治療法の特徴ですが、分子標的薬、TACE、RFAと肝細胞癌に似ていますね。
ただしそれに加えて最近のtopicとして、放射線内照射としてのペプチド受容体核医学内用療法(PRRT)が2021年秋に保険認可される可能性があります。

肝転移に関しては、後述の外科治療とどちらを選ぶかですが、全てとりきれそうなら外科手術をまず検討するようです。


外科治療に行く前に、前の記事も含めてここまでのまとめを表にします。
ちょっと一息。

では続いて外科治療です。

非機能性か機能性かで方針が変わりますね。
機能性であればまず切除を考えると思いますが、非機能性の場合はどうでしょうか。

膵内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドラインからの引用ですが:


局所進行の場合は、2cm以下では核出術を、それ以上では定型的膵切除が推奨されています。
1cmを越えると切除してしまった方が予後はよく、1cm以下なら増大するまで経過観察した方が予後がよかったとする報告もあります(Assi, et al. Oncologist 2020)。
核出術では膵液漏が、定型手術では内分泌機能がそれぞれもう一方より問題になりやすいようです。
またNECでは、肺小細胞癌と同様に外科手術の有効性は限定的なようですね。

機能性ですが、インスリノーマやガストリノーマは以下よりも細かい設定がありますが、概ねこんな感じです。
まずは全体像を記憶しやすくした方が、日常診療はストレスなく診療できると感じていますので、以下の感じで覚えておけばいいのではないでしょうか。

また高齢であれば、切除可能でもソマトスタチン製剤を使いながら手術を回避することもあると思います。
患者さんや外科と相談ですね。

最後に、転移とくに肝転移を有していた場合の方針です。
全てとりきれそうなら外科手術+前述の内科治療を選択することになりそうです。

手術をしたあとの再発ですが、Ki-67>5%、肝転移≧7個が再発ハイリスクとの報告があります(Masui, et al. Scand J Gastroenterology 2020)。

NECの場合の予後ですが、局所、局所進展、遠隔転移ありで最近の報告がありました(Dasari, et al. cancer 2018)。

NET G3までは切除できるなら転移があっても外科切除+内科治療。
NECや切除不可能なNETなら内科的治療を。
非機能NETなら1cm以下は経過観察も選択肢、というイメージでしょうか。


以下はコラム的な内容を2つです。

①volume reductionの話です。
卵巣癌はvolume reductionが予後改善に寄与すると言われたりしますよね。
NENでもそのような報告がありました(Tierney, et al. Int J Endocrinol 2020)。肝転移があるNENの報告ですが、原発巣と肝転移巣のできれば両者を、不可能なら原発巣だけでも切除した方が、肝転移巣のみ切除または非切除と比較して予後がよかったようです。ただしこれretrospectiveなので、当然切れそうな人だから切ったわけで、selection biasがかなり強いと思います。

②原発巣と転移巣でのグレード変化の話です。

院内の病理カンファで、以前の検体と比較して似ているから同じもの、違うから新規病変みたいな議論がたまにありませんか?NENの場合、とくに異時性転移の場合はその点に注意が必要とする報告があります(Grillo, et al. Neuroendocrinology 2016)。同時性転移では2割、異時性転移では8割のグレード変化があったようです。


2021年6月19日

Posted by ガイドワイヤー部長