予防的胆嚢摘出術について 〜胆石性胆管炎の治療後に迷うこと〜
NNT(Number Needed to Treat)を使って判断するのはどうでしょうか?
皆さんは、胆石性胆管炎の症例で、有石胆嚢の患者さんたちをどのようにされていますでしょうか。
胆石症ガイドライン2016(83ページのあたり)には、胆嚢炎再発のリスクから予防的胆嚢摘出術を推奨する記載があります。
日本の皆さんはどうしているのかと、自分でも医中誌でいくつか文献を見てみました。
そのまとめを載せてみます。
胆嚢炎を合併していたら、ハイリスクな患者さんでなければ胆摘は迷わないと思います。
しかし有石胆嚢なだけの場合はどうでしょうか。
有石胆嚢を放置した場合の
①胆嚢炎の発症
②総胆管結石としての再発
でそれぞれ見てみました。
①
胆嚢炎は増加するという報告と差はないとする報告がありました。
②
こちらでは、差がないとする報告、放置すると増えるとする報告、逆に切除した方が増えるという報告と様々でした。
報告によってまちまちですが、NNTは4-8程度。つまり3-7人は無駄な手術であったという結果でした。
NNT4-8、、、侵襲が低い治療なら素晴らしい数字なのですが、胆嚢摘出術は微妙だと思っています。
(NNT:何人治療したら1人に効果があるかの指標。絶対リスク減少(ARR)の逆数。)
ここで問題になるのは、胆嚢摘出術の侵襲性です。
手術自体は侵襲性の低い手術ですが、気になるのは偶発症です。
メジャーなものは胆管損傷による胆汁漏で、0.5-1%程度で報告されていたと思います。
たいていは外科からENBD留置の依頼が来て、入院が1週間程度伸びるくらいで済むと思います。
しかし中には、瘻孔が塞がらないまたは後日に炎症性の狭窄を来すなどで、胆管空腸吻合になる症例があります。
さらには胆管空腸吻合部がさらに狭窄することも起こります(胆管空腸吻合術が行われた症例の2-12%)。
こういう症例は、胆管炎治療や狭窄部拡張術を繰り返すことになる場合もあります。胆管空腸吻合部が完全閉塞したら、山内法、直視型EUSによる瘻孔形成、再手術などになります。QOLは大きく変わってしまいます。
ハードエンドポイントに明確なエビデンスがない現状では、上記偶発症を起こすと社会的影響が強い60代以下と、手術や偶発症治療への認容性が低下する85歳以上は避けて、70−85歳あたりがガイドラインの言葉通りに推奨しやすいような感じがしているのですが、皆さんの意見を聞かせて頂きたいです。
毎症例ごとに迷いながら、外来で予防的胆摘の説明をしますよね。
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