膵嚢胞 〜IPMNを中心に〜

2022年4月5日

膵嚢胞の診療は、迷うことが多くないですか?膵嚢胞の画像診断に始まり、経過観察方法、手術適応など。エビデンスが足りない部分もあって迷います。

このページは、外来中に軽く振り返りたい時用に作成したほぼ自分用のページです。IPMNガイドライン2017を軸に振り返りやすいようにまとめました。

まず最初に、複数の論文を引用させて頂きましたので、それらを提示させて頂きます。
1. IPMN国際診療ガイドライン2017
2. Pathological features and diagnosis of intraductal papillary mucinous neoplasm of the pancreas. Castellano-Megias V, et al. WJ of Gastrointest Oncol 2014.
3. Intraductal papillary mucinous neoplasm with pancreatogastric fistula. Takahashi H, et al. Internal Medicine 2021
4. 膵管鏡が治療方針の決定に寄与したIPMNの1例. 野口ら. Progress of Digestive Endoscopy 2020
5. 膵嚢胞性病変の画像診断. 石神ら. 福岡医誌 2021
6. 膵嚢胞性腫瘍のマネージメント. 花田ら. 日消誌 2019.

「文化庁の著作権についての見解を参考にし、「引用(第32条)」に準拠するようにしています。具体例としてその(注5)を参考にしています。しかしもし問題に気づかれた際には、お問合せフォームよりご連絡を頂けましたら迅速に対応させて頂きます。」

膵嚢胞は、以下のように分類できます。
病歴によっては非腫瘍性を疑いますが、ほとんどの場合は健診や他疾患のCTや腹部エコーで偶発的に見つかった嚢胞で、上皮細胞が嚢胞内面を覆っている真性嚢胞を疑うことになると思います。

この中でもとくに頻度の高いIPMNを中心として以下にまとめます。

左の画像は低倍率。粘液を溜めた複数の腺管が見えます。真ん中が高倍率。とくに上の写真は、右端は正常の立法円柱上皮で、真ん中から左にかけてがIPMNの細胞です。右の写真は膵管鏡で見たIPMNです。

以下に、IPMN以外の膵嚢胞の特徴を提示します。

「IPMN併存膵癌」
IPMNの悪性化ではなく、IPMNは膵臓全体が膵癌のハイリスクな母地として考えます。
膵腫瘍自体は見えない場合の重要な所見は、限局的膵管狭窄像。膵管狭窄の半数近くに癌が見つかったとする報告もあります。

「神経内分泌腫瘍」
充実成分が多血性の場合には念頭に置くことが必要。

「MCN:手術適応」
画像の特徴は、被膜が厚いこととCyst-in-Cystです(オレンジ様と称されることもあります。たぶんオレンジを輪切りにした見た目がCyst-in-Cystに見えるということを言っているのだと思います)。若〜中年女性の体尾部にできやすいという特徴もあります。

「SCN:経過観察」
一言で言えば、染まる水!
造影効果があるのに、MRIではT2高信号となります。蜂巣状の多房性嚢胞なのですが、体積として隔壁の割合が多いので、造影効果を持った嚢胞という特徴になります。

「SPN:手術適応」
嚢胞成分、出血成分(T1 high)、充実成分などが混在した嚢胞性腫瘍。若年女性に多い。

「類表皮嚢胞:経過観察」
明瞭で均一な厚みの被膜を持つ、くりっとしたきれいな形をした嚢胞。
膵内副脾から生じることが多く、膵内副脾は膵尾部に多いためこの嚢胞も膵尾部に多い。
嚢胞辺縁に局在する脾組織は、DynamicCTやMRIで、脾臓と同様の造影動態を示す。

「リンパ上皮嚢胞:経過観察」
多房性嚢胞の形態をとることもある。嚢胞壁は繊維成分や腫瘍ではなくリンパ組織が存在する。嚢胞全体または一部にケラチン成分によってT1 high、DWI highとなる。T1 highの膵嚢胞の鑑別は、一部のMCNやSPN。

膵嚢胞の特徴を比較した表も、まとめとして提示します。

診断も迷うことがありますが、とくに手術適応に関しては経過観察するか外科に回すか迷います。
手術したら腺腫だったということも少なからずありますが、腺腫のうちに手術できれば再発が少ないですし、若年ならば標準的な手術適応を満たすなら外科紹介でしょうか。しかし高齢者ならば、腫瘍性の膵嚢胞が悪性化して命を奪うまでは比較的長期間を要するので、天寿を全うされる時期の方が早くなる可能性すらあります。手術が予後に寄与できるかどうか、患者さんとよく相談するようにしています。