センスじゃない?胆管挿管99%への一歩① 〜胆管走行をイメージする〜
胆管挿管は、【①胆管走行をイメージする→②その胆管イメージにカテーテルを合わせる操作をする】です。
この記事では、まず胆管走行をイメージすることの解説をします。
胆管挿管
- 全国的には平均94−95%程度?
- 胆管挿管できないとERCPが進まない
- 学会でも施設の治療成績の1つとして発表されることもある
みなさんの胆管挿管率はどのくらいでしょうか?
私の施設では、2016年に「EST未施行乳頭で腸管切除をしていない通常腸管」に絞った264例のデータを出してみたところ、初回ERCPで98.9%、2回目までのERCPで99.6%でした。
ERCP全体は年間500例程度で、それを2人のスタッフとローテーターでやっています。
そしてERCPは、Interventional EUSが発達してきた今も、胆膵内視鏡の主軸となる検査です。
ここから、私の胆管挿管の方法を紹介していきます。
著名な先生方が詳細な方法論を本やネットで解説していますが、私はより直感的に判断できるように解説してみたいと思います。メーカー主催の研究会で講演させてもらった時のものを基にしています。
”直感的”のために、やや言い切るような書き方になることをご容赦ください。
最後に動画も提示しています。
口側隆起の中にあって見えない胆管をイメージし、そのイメージした胆管に向けてカテーテルとガイドワイヤーを入れていくのですが、その胆管をイメージするために胆管開口部である主乳頭ではなく、口側隆起だけを見てください。
少しだけ手を加えてありますが、下のイラストは入澤先生の論文から引用させて頂きました。
<左のイラスト>
主乳頭ではなく、口側隆起に注目です。
・胆管は口側隆起の11時〜12時方向を走行しています。
・口側隆起が大きいと11時に、小さいと12時方向になりやすいとされています。
注意点は、十二指腸ヒダに対してではなく、口側隆起の正中を12時とすることです。十二指腸ヒダに対して傾いている口側隆起もありますから。
<右のイラスト>
・口側隆起が大きいと胆管は立ちやすく
・口側隆起が小さいと胆管は寝やすい
ということも言われています。イメージを持ちやすいように、立っているとは60ー75度くらい、寝ているとは30ー45度くらいを想像してもらえればと思います。
このようにして、傾きと奥行きをそれぞれ設定することで、3次元的な胆管走行をイメージします。
ただし、胆管は口側隆起の中を一直線に進むのではなく、十二指腸壁を貫いて腹腔に出る方向に行きます。
そのため特に、口側隆起が大きい場合は口側隆起のどこかで大きく曲がる可能性があります。
下の画像のように、大きな口側隆起で立ち上がりが急峻な場合、胆管が直線的に進んだら、口側隆起を貫いて十二指腸内腔に戻ってしまいますから(このことは、下に2つの動画を出しますが、2つ目の動画の胆管挿管に関与してきます)。
このようにしてイメージした胆管走行に沿うように、カテーテルやガイドワイヤーを進めていきます。
実際の胆管挿管は、まずはイメージした理論像に向けて行いますが、人体が理想から外れることはよくあり、理論像から少しずつ傾きと奥行きをずらしながら胆管像の構築をリトライし続けます。
では動画を2つ提示します。
大きい画面の左に、小さい胆管軸をイメージした動画を出しています。
みなさんも傾きと奥行きをイメージしながら見てみて下さい。
私は、口側隆起が小さいため、傾きは12時方向に近く、奥行きは寝ている方向に近いとイメージしました。
次の動画です。
口側隆起が大きいため、傾きは11時方向に近く、奥行きは立つ方向だとイメージしました。
このようにして胆管をイメージして(イメージした胆管を、胆管軸と言ったりします)、カテーテルやガイドワイヤーを進めます。
ここまではセンスは関係ありません。次回の投稿では、術者は左手と右手をどのように使って、イメージした胆管軸にカテーテルやガイドワイヤーを向けているのかについて書きたいと思います。
(センスじゃない?胆管挿管99%への一歩②)
ここまで口側隆起に注目して胆管をイメージしてもらいました。
ところで、主乳頭の開口部の分類も存在します。大井先生や猪股先生らが報告されています。1/4程度はタマネギ型に代表される別開口型ですが、その他の多くは隔壁型が占めます。これは、開口部にカテ先が1-2mm入った時点で、胆管か膵管か決まってしまうことを意味します。乳頭にカテ先を当てた時点で、カテ先が胆管方向をきちんと向いているかを意識してください。
・口側隆起の正中が12時方向です。
・口側隆起の大きさを見て、傾きと奥行きをイメージします。
・開口部にカテ先を当てた時点で、カテ先が胆管方向を向いている必要があります。
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