慢性膵炎 〜疫学的データを含めて〜



敬遠しがちな方もいると思いますので、まとめます!
さらっと復習に使ってもらえればと思います。

皆さんは慢性膵炎にどのようなイメージがありますでしょうか。
アルコールが多く、治療しても禁酒できないために悪化してしまい、内視鏡治療にも抵抗性でなかなかステントフリーにできず、ドロップアウトも少なくないですし、しかも気を抜くと膵癌を発症する(時に慢性膵炎の方は画像のコントラストがわかりにくい!)。でも患者さんとして来たら頑張るのみです笑

「胆と膵」では2014と2019に膵炎大全として特集が組まれています。それを中心としたまとめ記事になります。忘れがちな自分のためにも笑

①どんな病気?

患者数は67000人。人口10万人規模の町で50くらいの患者さんがいます。

肝硬変と似たようなイメージで、膵臓の細胞が破壊され代わりに線維性の硬い組織に置き換わります。そのため膵臓の機能(消化、血糖の管理)が低下し、低栄養と糖尿病を発症します。

また慢性膵炎は膵癌のリスクでもあります。

慢性膵炎は平均寿命より15年程度は寿命が縮むとされますが、発症した場合は不可逆的です。そのため、診断できた時点でそれ以上進行しないようにすることが重要です。

②原因
70%●アルコール
21%●特発性(原因不明ということ)
2%●急性膵炎
1%●胆石
1%●遺伝性
5%●その他(脂質異常症、副甲状腺機能亢進症etc)

③症状の出方
慢性膵炎は3つの期間に分類されます。
●代償期:膵機能は保たれるが腹痛発作を繰り返す期間が5年程度あります(稀に腹痛なく進行することがあります)。
●移行期:進行性に膵機能が低下し始めますが、膵液が減少するため腹痛は軽くなります。
●非代償期:膵機能が9割以上低下し、糖尿病と低栄養となります。腹痛はほとんど見られません(外分泌と内分泌機能低下)。

片岡ら 胆と膵2014 ; 35 : 1077-1084

④検査
膵臓は診断が難しい臓器の1つとされ、精密検査に行くためにはまず慢性膵炎を疑うきっかけが必要となります。日々の生活の中で、または診察時の問診にて慢性膵炎を疑うきっかけは、飲酒、喫煙、高脂肪食、膵炎や高脂肪の家族歴(②原因に記載したこと)の背景があること。また自覚症状(腹痛発作とその繰り返し、やせ、テカテカして泥状となる脂肪便)です。

一般検査としては、採血、腹部超音波、CT検査がまず行われます。
採血では、膵臓の破壊を反映してアミラーゼ(AMY)が上昇します。また低栄養を反映して、アルブミン(Alb)、ヘモグロビン(Hb)、コレステロール(Chol)が低値となります。
腹部の画像検査では、典型的な所見は、膵管内結石と膵全体に分布する石灰化です。またMRIも低侵襲な検査で、膵管に不均等な狭窄と拡張が出現します。

これらが汎用される検査ですが、確定診断がつきにくい場合には、ERCP(内視鏡的膵胆管造影検査と組織検査)やBT-PABA試験(膵臓の残存消化力を調べる検査)を行う場合があります。私はBT-PABA試験は1回しかやったことありません。

⑤診断
上記の結果を踏まえて診断を行います。
2019には慢性膵炎の診断基準に変更があり、エタノールは80g→60gに基準が引き下げられましたね。

⑥治療法
まずは内科的治療法(生活習慣と投薬):
・禁酒、禁煙
・脂肪制限(代償期でも腹痛発作を繰り返す症例、または非代償期の症例)
・鎮痛薬
・消化酵素薬(腹痛や下痢に対して)
・蛋白分解酵素阻害薬(腹痛に対して)
・栄養剤elemental diet:ED(腹痛や低栄養に対して)
有名なのは、リパクレオンとエレンタールでしょうか。どちらも腹痛、下痢、低栄養に効果があるとされていて、実際使っていても症状がよくなる患者さんが多い印象です。

これらで効果が乏しい場合に内視鏡治療を考慮する。内視鏡治療の適応は、有症状の主膵管結石と主膵管狭窄です。膵機能を温存する効果は証明されておらず、それに対する適応はありません。

主膵管の6㎜程度までの小結石(10㎜以上は内視鏡治療困難)。結石は、バスケットで採ってくる方法や、レーザーや水圧で破砕を加える方法、ESWLと内視鏡を組み合わせるやり方があります。結石消失率は88%、症状改善率は98%とされています。

・また主膵管狭窄に対しては、バルーン拡張やステント留置が行われ、ステントは数か月は留置したままにする場合が多い。症状改善率は65%-95%と報告されています。

内視鏡治療でも無効や再発を繰り返す場合に外科手術(膵管減圧術や膵切除)を考慮します。

⑦予防法

既に発症した方は進行を遅らせる日々の注意点は、永続的な禁酒と禁煙です。
腹痛発作がある場合には、脂肪制限(1日脂肪35g程度)が推奨されます。腹痛発作がない場合の脂肪は1日40-60g程度が推奨量となります(腹痛や脂肪便がない場合の制限は不要。低栄養へのリスクから。)。

⑧予後

我が国の全国調査では、慢性膵炎患者は平均67歳で死亡します。
アルコール依存症の平均寿命が50歳前後で、慢性膵炎の方達は一般人口の平均寿命よりもそれに近いですね。

主な原因は、悪性腫瘍、腎不全、肝疾患、糖尿病です。そのため、発症しないための日々の生活習慣見直しと、診断したらそれ以上の進行を予防する生活習慣が必要となります。

また慢性膵炎は膵癌の高リスク群で、膵管拡張、嚢胞出現、糖尿病悪化がある場合には、腹部画像検査を複数行うことが望ましいです。これらがなくても1年に1回は画像検査をうけることが推奨されます(特に飲酒や喫煙の継続をしている患者)。

禁酒と禁煙!
そして腹痛、下痢、低栄養に合わせて、脂肪制限、リパクレオン、エレンタールなどの内科的治療。腹痛症例には内視鏡治療ですね。