G-CSF産生膵癌

2021年7月6日

発熱で化学療法開始を見送ったことはないでしょうか。
私は、全身状態が良好だけれども発熱と高炎症反応のために、腫瘍熱と思いつつも化学療法を見送ることが時折あります。

今回は、その最たる症例の紹介です。

左側腹部痛を主訴に来院され、来院時には38度台の発熱を伴っていました。
CTで、肝転移などを認め、stageⅣと判断しました。
EUS-FNAにて組織検査を行い、中分化〜低分化な腺癌でした。

化学療法はnabPAc+GEMを開始予定でしたが、開始日には38度台の発熱、WBC30000、CRP10程度と高炎症反応の状態で延期しました。その後も炎症反応は日を追うごとに上昇しましたが、全身状態は悪くなく腫瘍熱を疑いました。それにしてもデータが派手でしたため、採血にてG-CSFを外注してみたところ673pg/mlと高値を示しました(基準値<39pg/ml)。

そのためG-CSF産生膵癌の疑いが強いと考えましたが、その頃には39度台の発熱を来すようになっていたため感染の可能性も捨てられず、入院下で化学療法を導入しました。
効果はグラフの通りで、まずは発熱とWBCが、遅れてCRPも改善を示しました。
しかし化学療法への認容性が低く、skipをしている期間は再び増悪するような経過でした。

その間に、裏付けのためにG-CSFの免疫染色をオーダーしていましたが、結果は陽性でした。

G-CSF産生膵癌の報告をまとめます。
体温の中央値は38.2度、WBCの中央値は49700/ulでした。
G-CSFの中央値は167.5pg/mlでした。

G-CSF産生膵癌自体は稀ですが、肺癌や膀胱癌では多いようです。
それらを含めて、G-CSF産生腫瘍の特徴を以下にまとめてみます。

G-CSF産生腫瘍は、1977年にAsanoら(※1)により報告されました。口腔、胃、大腸、泌尿器系、卵巣、胆道などの報告がありますが、これまでの報告の多くは肺癌であり、膵癌での報告は限られています。三澤ら(※3)は、G-CSF産生腫瘍において、膵原発は6.8%と述べていました。G-CSF産生腫瘍の診断基準として、①著明な白血球増多、②G-CSF活性値の上昇、③腫瘍切除・治療による白血球とG-CSF活性値の低下、④腫瘍内のG-CSF産生の証明、の4項目が提唱されています。

本症例では①~④の全てを満たしており、G-CSF産生膵癌と診断しました。
G-CSF産生腫瘍は一般に進行が早く予後不良とされていますが、その原因として分化度が低い腫瘍であることが多いこと、G-CSFが腫瘍の増殖や転移に関与することが挙げられていました(※4)。

高炎症状態を疑う患者さんで化学療法を躊躇するような場合、G-CSF産生腫瘍は一考の余地があるかもしれません。