PPC/WONに対するEUSドレナージ② 〜ドレナージ後〜

2021年6月11日

EUSドレナージをした後は、ネクロセクトミーしますか?ステントはいつ抜きますか?

私は、これを毎症例ごとに悩んでいます。
そもそもEUSドレナージが必要かの話からですが、、

少し古い報告からの抜粋ですが、PPC/WONは、6割くらいは保存的に様子を見て必要ならドレナージを加える方針で治癒していたんですね。感染性WONですら、4-5割はネクロセクトミーなしで治癒していたようです。それゆえにSTEP UP APPROACHが推奨されています。しかし感染性WONの死亡率は12−26%との報告もあり、STEP UPする時期は逸したくないですよね。
・TG2018   ・改訂アトランタ分類2012    ・van santvoort et al. A conservative and minimally invasive approach to necrotizing pancreatitis improves outcome.: Gastroenterology 2011

最近はネクロセクトミーを容易にするメタリックステントがあります。いわゆるLAMS(商品名はHOT AXIOS)ですね。
当院でも使用していますが、これが出る前に比べると格段に胃⇆WONのスコープ移動が容易になりました。
WONは、胃壁が膿瘍壁の一部を担っているので原理的には胃壁に穴をあけても腹腔への穿孔にはならないのですが、本当にきれいに腹腔への漏れなく穴をあけられている保証はありません。そのため瘻孔に被膜が形成される期間を十分にとってからネクロセクトミーをやっていた時期もありましたが、LAMSの登場でその心配はなくなりました。

そのため、ドレナージをして改善傾向が見られない場合は、早期にネクロセクトミーへの移行が可能です。
そして、通常は外科的ではなく内視鏡的ネクロセクトミーが優先ですね。その根拠ですが、

このような論文があります。メジャーな偶発症や死亡率は外科的と内視鏡的で差はありませんでしたが、膵液漏や入院期間で内視鏡が優れていると結論されました。手術自体の負担も考えれば、現状は内視鏡を優先することで迷う必要はなさそうです。
骨盤腔に達するようなものでWONの形状が複雑なものは、外科的介入を考えたくなりますが、、、

またこちらは、内視鏡的ネクロセクトミー自体の成績に関する安田先生の2013年の論文です。
偶発症3割、死亡率1割。気をつけて処置したいと思います。

ちなみに最近やったネクロセクトミーでは5脚鉗子をメインに使いました。
膿瘍壁である肉芽組織と壊死物質の区別は、いつも肉眼的に明瞭ではありません。5脚を少し開いた状態でつついてみて、ぐずぐずした組織なら掴むという感じです。
しかし壊死組織の中に肉柱が入っていることもあり、鉗子の先端で壊死組織をある程度崩してできるだけ壊死組織の中まで視野確保に努めています。そうはいっても難しいのですが、、、

こういったWONの内腔に、本当の柱のように肉柱が走っていることもよくあります。
ネクロセクトミーで掘り進めている時は、内腔は壊死物質に埋め尽くされていることもあり、肉柱が見えずに鉗子で掴んでちぎってしまうこともあります。
私のネクロセクトミーでの注意点は、
鉗子の先端で壊死組織をつついて崩して可能な限り壊死組織の中を覗き見てから掴む、
肉芽組織を掴むとoozingすることがあるので掴んだ時点でそれが見えたら掴んでいたものを離す、
掴むものが逃げるような動きがある(=柔らかい壊死組織ではない硬いものを掴んだということ)、
掴んだら鉗子を動かしてみて周囲の膿瘍壁が一緒に動かないか確認する(膿瘍全体が動く感じ=壊死組織ではなく壁を掴んでいるということ)、
です。皆さんのTipsがありましたら教えて頂けましたら幸いです!

さて、もう少しお付き合いください。
留置したステントをいつ抜くかという話です。
HOT AXIOSの場合は60日以内とメーカーから決められていますね。

2020年の論文ですが、出血性偶発症を抑えることを狙ってのAXIOSの早期抜去(中央値でPPC3週間、WON5週間)をトライした検討です。良くも悪くもなかったようですね。
壊死物質がほぼ除去できていれば早期抜去も選択肢ですね。
では、「壊死物質が残っているが、状態は良好で外来フォローできそうな場合」はどうでしょうか。早期抜去していいとは思えませんが、AXIOSの留置には期限があります。そのような場合は、この論文ではAXIOSの再留置をしたようです。当院では、「再燃時に再度EUS-PCDによる穿刺をしなくてもいいように、管腔確保のためのプラスチックステントを数ヶ月ごとに交換しながら、外来CTフォローでWONの消失を待つ」という方針が多いように思います。
これも皆さんの施設のやり方を教えて頂けましたら幸いです。

LAMS(HOT AXIOS)が使用できる現状では、患者さんの状態に合わせて遅滞なくネクロセクトミーができそうです。
壊死物質の残存状況によって、早期抜去かステント交換しつつの長期留置かの検討でいいでしょうか。


最後に余談ですが、WONによって十二指腸が閉塞する症例がたまに経験されませんか?
WONの治療をまず優先しますが、それでも開存しない場合、消化管拡張バルーンの検討をしてもいいかもしれません。

2021年6月11日

Posted by ガイドワイヤー部長