センスじゃない?胆管挿管99%への一歩③ 〜ERCP困難例への対処〜

2021年7月1日

9割の胆管挿管は、前回までの記事①と②で成功します。この記事では胆管挿管困難例への対処を紹介します。

ERCPにこだわる必要があるか、困難例はとっととEUSにしたらいいじゃないかという話から。
以下のようにERCP成功率が高い施設では、代替手段としてのEUSは、0.6%でのみ必要であったという報告がありますね。

しかしそれとは逆に、悪性胆道狭窄に対する報告ですが、EUS-BDが症例によっては第一選択になりうる可能性を示唆した報告もあります(この報告に対する記事:ERCPとEUS-BDの比較のメタアナライシス)(EUS-BDの成功率や偶発症に関するメタアナライシス)。しかしこれらの記事でも、現状ではEUS-BDはERCPの救済手段としての役割と結論されています。まだまだERCPが胆膵内視鏡の主役であり、またERCPで胆管や膵管の解剖を理解しGWや瘻孔拡張器具に慣れておくことが、EUS-BDの成功率につながると思います。

しかし、どのタイミングでERCPは困難としてEUS-BDに移行するかは難しい問題です。
施設ごとのERCPの技術力、術者の考え方、緩和的ドレナージかbridge to surgeryかなどの患者背景などなど複数の要因が関与します。初回ERCPは不成功でも、precutしておいて2回目をやると成功することも経験されますので、患者に緊急性があるかも関与します。

ERCP胆管挿管の最終手段的なprecutですが、そのカードを早期に切っていく「early precutの有用性」が複数報告されています。そのため以前よりも早い時間に手を出し尽くすことが増えている可能性があります(precutまで要する症例は少ないので、あまり実感はないのですが)。それでもERCPの救済としてのEUS-BDを決定するのは、私はERCPを1時間程度はやってから決断することがおおいように思います(正確なデータではないです)。当院のERCPの救済としてのEUS-BDは1%前後です。正常腸管かつ良性疾患ではほとんどやりませんが、再建腸管では良性疾患でもやることがあります。


では本題に入ります。
ERCPで胆管挿管をトライする時の流れですが、通常は以下のようになるかと思います。

次のステップに移る根拠となる報告も、以下に紹介しておきます。
胆管挿管に20分以上かかるようなら困難例として、次のステップを考えます。
とくに通常法や膵管留置法は、PEP発症に関しては5-10分がグレーゾーンで、10分以上はPEP発症率が上がります。
また最近では、開始直後〜12分程度を目安に早期のprecut(EPST※NKP※※)を行うことでPEP減少の有効性が報告されています。
早めに次のステップに行くような流れですね。


※EPST:膵管口から胆管方向へ通常のEST knifeにて切り上げる方法。
※※NKP:針状ナイフで乳頭部の胆管口から口側隆起を切開する(切り上げず、逆に口側隆起から切り下げてもいい)。

ざっくり言えば、やり過ぎたらPEP増えるから早めに次のステップに移っていこうねって報告達ですね。これらを踏まえて、私は通常法や膵管留置法を乳頭正面視から20分程度やって、胆管挿管できていなければprecutを考えるようにしています。2015年頃までは、precutするまでに60分くらい粘ることも多かったように思います。

2016年の、当院の胆管挿管の方法の内訳です。
EST未施行のnative papilla 266例のデータです。
上記のストラテジーで、実際はどのようになるのか参考として提示します。

ちなみにこの年の胆管挿管成功率は99.6%でした(初回は98.9%、2回目までを含めて99.6%)。

※2D1C法:2 device 1 channel method


ここからは、実際の困難例への対応を提示していきます。
近接法、膵管留置法、precut(EPST、NKP)、2D1C法、EUSランデブー法などです。

まずは近接法です。原理は入澤先生の論文を引用させて頂きます。
カテーテルの先端を、乳頭の胆管に浅く引っ掛けておき、スコープを引いて膵管よりも頭側に位置しやすい胆管にロックオン。
さらに胆管は膵管よりも立ち上がりが急なことが多いので、その状態のままアップアングルを掛けることで胆管軸にカテーテルが合う
というものです。

次は、膵管留置法です。
double guidewire technicとも言われ、厳密には違うものですが私はあまり気にしていません笑
原理は良澤先生の論文を引用させて頂きます。
膵管にGWを留置したまま、新たにカテーテルとGWを鉗子孔から入れていきます。膵管にGWがあることで、胆管の立ち上がりが緩やかになり、また直線化もされるため、胆管挿管しやすい状況が生まれます。
さらに、傍乳頭憩室で乳頭がスコープの方を向いてくれない症例であっても、膵管にGWを入れることで正面視が可能になる場合があります。

続いてprecutです。
原理は窪田先生らの論文を引用させて頂きます。
口側隆起内の胆管を切り開くということだけなんですが、ちゃんと切れていても、翌日にならないと切開面が分からないことも稀にあります。その意味で、緊急性がなければprecutの1-2日後に再ERCPを行うことは有効だったりします。


やり方ですが、
方向口側隆起の12時方向を、
切開長は口側隆起の2/3程度が基本になります。layer-to-layerという記述がありますが、深さとして浅い切開を繰り返して深さを増し、胆管に到達するようにということです。
そのように切開していくと、十二指腸粘膜とは別の組織、私の言葉で申し訳ありませんが「毛羽だったラッキョ」のようなものに当たります。これが乳頭括約筋なのだと思います。だから十二指腸粘膜とは違う動きをする、コリコリとして繊維性の毛羽立ちを感じるような構造です。それを切ると、ほぼ胆管に入れます。出血していたり、括約筋の発達が悪い症例だと分かりにくい構造ですが。

プレカット

まずはEPST。

こちらはNKP。

2D1C法も動画で提示しておきます。
カテーテルと生検(2 device)を1つの鉗子孔(1 channel)に通して行うので2D1C法です。
そっぽを向いている乳頭を、生検鉗子で引っ張ってスコープの方を向いてもらい、カテーテルにて胆管挿管します。

最後は、ERCP困難例の救済としてのEUS-randezvousの動画を提示して終わりにします。
この症例では、胃体部から肝内胆管を穿刺して、GWを十二指腸まで出します。GWを留置したままEUSスコープは抜きます。口からGWが出た状態になりますが、そのGWの脇からERCPスコープを挿入します。十二指腸乳頭部まで進めて、鉗子でGWを掴むことで、胆管とERCPスコープが繋がります。

胆管挿管困難例には、通常法は20分程度にし、膵管留置法→precut→ランデブーなど代替手段へと移っていくんですね。