分子型IPMNにおける10mm以下の内部結節

2021年8月7日今月の論文紹介

分子型IPMNをフォロー中に、どのような所見が見つかれば手術適応と判断しますでしょうか。
私は、迷うことが多いです。

いまのところ、フォロー中の症例の変化を見逃したために手術時期を逃したことはありません。しかし、フォロー中に膵炎を発症し、その改善後に精査をしたところIPMNが変化しており、手術で完全切除となりましたが、数ヶ月後に再発してしまった症例を1例経験しております。


しかし手遅れを減らす努力は、不要な手術症例を増やすことへの懸念も強めることになります。
これらの妥協点を探るために、現在のエビデンスはどうなっているのか調べてみました。
(もちろん、ガイドラインを遵守するように努めています。)

まずは分子型IPMNにおける、浸潤癌であるリスク因子の検討です。2020年に報告された論文です。

多変量解析がされ以下の4つが浸潤癌と関連する独立因子とされました。この際のOdds比によって、重み付けが変わっています。
転移を疑うリンパ節     4点
主膵管≧10mmとなった場合 2点
主膵管径の急な変化     1.5点
内部結節          1点


合計点(0〜8.5点)でカテゴリー分けされ、A(0〜1点)、B(1.5〜3点)、C(3.5〜5点)、D(5.5〜8.5点)は、それぞれ8.5%、38.9%、62.5%、100%の陽性的中率を示しました。
曲線下面積は0.857(P<0.001)で,スコアの感度と特異度は84%と70%でした。

感染などの他疾患がないのにリンパ節が腫大してきたら、そりゃそうだという感じですね。
注目すべきは、主膵管変化を伴わなければ、嚢胞内結節のみでは浸潤癌である可能性は低いということです。IPMNガイドラインでも、造影される内部結節は5mm以下ならworrisome futureであり、high risk stigmataですらないですね(この5mmというカットオフに関してはエビデンスは乏しい)。

その嚢胞内部結節に関しては、2014年の報告ですが、10mm以下の嚢胞内結節を経過観察した報告があります。

53人の10mm以下の内部結節がある分枝型IPMNを3−4年フォローしたところ、12人で結節が増大し、6人が手術となったようです。しかし手術した6人のうち悪性化していたのは1人だけで、5人はadenomaだったようです。結論として、10mm以下の嚢胞内結節は経過観察可能としています。


私も、フォロー中に嚢胞内結節が出現/増大して来たため手術としたらadenomaだった症例を経験しています。
フォロー期間は3−4年なので、長期的にはほとんどの症例が癌化するという極端な可能性もあるのですが、少なくとも様子を伺う猶予は持ってよさそうです。とくに70代後半や80代の症例は、超長期的な視点は必要ないので尚更経過観察してもいいかもしれません。