胆膵内科医も関わるHCCの話 〜放射線治療を中心に〜

2021年7月12日今月の論文紹介

時に閉塞性黄疸の原因となる肝細胞癌ですが、肝臓専門医の数は多くはないようです。そのため、総合病院では消化器内科医が診療に当たっているのではないでしょうか(多くは消化管の医師が兼任で、または胆膵の医師がいる病院は肝胆膵グループとして)。

胆膵内科医は、閉塞性黄疸の原因として、または肝内胆管癌や転移性肝腫瘍の鑑別としてコンサルトを受けることもあるのではないでしょうか。胆道鏡をやると、肝細胞癌が一部壊死して胆管内にぼろぼろこぼれ落ちているようなものを見ることがあります。そして、場合によってはそのまま自分で外来まで受け持つことも。

世界第6位のがんである肝細胞癌は、日本のみならずアメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国など複数のガイドラインが存在し、治療方針を明確にしています。残肝機能、腫瘍サイズ、個数、脈管浸潤、肝外病変などによって治療選択が決まります。
ただ、ここには癌治療の代表の1つである放射線治療(RT)はほとんど登場しません。有効な成績を示した第3相試験がなく、第2相試験までの効きそうだという結果を多数集めて、有効性を訴えている状況だからです。
しかし近年、放射線照射の計画段階の技術、照射技術などの向上で、治療成績も向上することが期待されています。

肝細胞癌は肝予備能が低下している症例が多いこともあり、外科手術が行える症例は10-30%とされています(ある報告では膵癌は2割程度とされていましたので、それに近いですね)。また、TACEか手術かを迷うようなある程度進行したHCCでは、再発率は外科手術で50%、RFAで80%という報告もあります。


患者背景が厳選されていないような一般的な総合病院では、TACEや化学療法になる患者さんが多いと思います。
またその化学療法ですが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの開発で肝細胞癌の予後は延長してくることが予想され、手術/RFA /TACEが行えない患者さんでも局所治療を追加したくなる症例はあると思います。そのような場合にRTを検討することになります。


RTは、手術/RFA /TACEが影響を受ける「腫瘍のサイズ/場所/個数」には影響を受けにくいです。ただし施行可能かどうかには影響を受けにくいですが、サイズと個数は治療成績を下げる要因ではあります(照射範囲増加により放射線関連肝障害(RILD)が増加することがその主な理由)。

肝外病変と門脈IVCへの浸潤においては、局所療法はRTしかないでしょう。
骨転移、門脈浸潤による肝機能やTACEへの影響、IVC浸潤による腹水や下腿浮腫。これらの病変へのRTの奏功率は悪くないと報告されています(6−7割程度)。
また移植までの橋渡しとしての有効性も報告があります。

副作用に関してですが、副作用全体では、grade3以上のものは15%程度のようです。骨髄抑制、皮膚障害、消化管障害(嘔気、下痢、胃十二指腸潰瘍、狭窄)など。またRChild-pughスコアがAまたは7点のBまでの症例に適応としておかないと、RILDが増加します。またソラフェニブと同時併用すると、腸閉塞が増える可能性が指摘されており、同時併用には注意です。

まとめですが、
肝機能が悪くない症例(ChildA、Aに近いB)では、手術やRFAができないが局所療法を行いたい場合の選択肢(手術の断端陽性も含め)、または骨転移や門脈浸潤の症例に対してRTは検討の余地はあるように思います。