無症状総胆管結石の方針

今月の論文紹介

皆さん、無症状の総胆管結石はどのような方針で診療していますでしょうか。日本消化器病学会の胆石症ガイドラインによれば、質の高いエビデンスはなく、推奨も弱いとしながらも、総胆管結石は無症状でも症候性になる可能性が高いので、無症状のうちから治療を勧めるとしています。しかしERCPは、偶発症も少ないとは言えず、重症膵炎となり長期入院からのADLやQOLを低下させることは、内視鏡医にとっても患者さんにとっても不安の種です。

今回ご紹介する論文は、無症状であれば経過観察も有力な選択肢とする結論です。

方法:
無症候性総胆管結石と診断された連続患者を同定し、結石を原位置のまま経過観察した群(待機群)と早期内視鏡的結石除去を受けた群(介入群)に分類した。胆道系合併症の累積発生関数を推定し、グループ間で比較した。

結果:
191人の患者(待機群114人、介入群77人)を対象とした。待機群では、胆道合併症の累積発生率は1年で6.1%、3年で11%、5年で17%であった。結石の無症状消失は22人(19%)に認められた。無症状の結石を早期に内視鏡的に除去した場合の処置関連有害事象は、重症膵炎4名(5.2%)を含む25名(32%)に観察された。胆道系合併症の累積発生関数は、治療戦略による差はなかった(P = 0.55)。

結論:
胆道合併症は無症候性胆管結石患者のかなりの割合で発生した(3年で1割)が、早期内視鏡的切除はさらなる胆道合併症の予防にほとんど効果がないようであった。処置に関連した膵炎のリスクを考慮すると、待機的戦略は無症候性結石の管理オプションになる可能性がある。

ERCP後膵炎は、総胆管結石の拡張がないとかBil上昇がない症例ではハイリスクであることが知られています(ヨーロッパのESGEガイドラインに明記されています)。無症状の症例はそのハイリスク側になりやすいのは想像に難くないですね。つまり、無症状のERCP後膵炎ハイリスクの人に、ERCPをやるメリットを説明することが、外来では必要になります(やっておかないと後日のトラブルの元です)。ESTしちゃうと、その後の胆石再発率が高いとする報告もありますし、有症状となってからの治療でもいいのかもしれないですね。累積再発率は経年的に高くなりますから、50−70歳程度の比較的若年であれば、無症状のうちから治療してもいいかもですね。5年で17%の再発率ですから、80歳程度になると平均寿命までに5人に1人だけ症候性になります。経過観察が許容されそうですね。

今月の論文紹介

Posted by ガイドワイヤー部長