ERCPとEUS-BDの比較:RCTのメタアナリシス
ERCPとEUS-BDの成績を比較したRCTだけを集めたメタアナリシスの論文が出ました。
結果を掲載します:
・519人の患者からなる5つのRCTが最終解析に含まれた。
・ERCPと比較したEUS-BDの総合的な技術的成功のプールリスク比(RR)は1.05(95%CI = 0.96 – 1.16、p = 0.246、I2 = 61%)、臨床的成功のプールリスク比(RR)は0.99(95%CI = 0.95 – 1.04、p = 0.850、I2 = 0%)。
・平均手技時間はERCPが21.06分(SD = 6.64分)であったのに対し、EUS-BDは13.43分(SD = 10.12分)。
・手技に関連した膵炎のプール率は、EUS-BD群ではゼロであったのに対し、ERCP群では7.20%(95%CI = 3.60 – 13.80, I2 = 34%)。
・ERCPと比較したEUS-BDによるステント機能不全のプールRRは0.48(95%CI = 0.28 – 0.83, p = 0.008, I2 = 7%)。
・ステント留置日数の平均は、EUS-BD群で194.11日(SD=52.12)、ERCP群で187日(SD=60.70)。
成功率は、技術的にも臨床的にも同等。手技時間はEUS-BDが短い。
偶発症では膵炎の比較がされ、当然ですがERCPが多い。
ステント機能不全はERCPで起こりやすいが、開存期間は半年でほぼ同等。
成績だけ見ると、遠位胆管癌に対するドレナージだけの目的なら、もはやEUS-BDファーストでも良さそうです。
しかしEUS-BDは不成功またはステント早期逸脱で消化管穿孔からの手術になるリスクがあります。これはEUS-BDで最も注意を要する偶発症です。またEUS-BDには少ないながら播種のリスクもあります。そのため、手術を予定するような症例ではEUS-BDをファーストチョイスとするのはためらわれます。
また通常、治療成績のデータはハイボリュームセンターから出てきますので、一般病院の治療成績とは差が生じる可能性があります。この点も留意が必要です。
今回の論文を受けて、明日から急にEUS-BDをファーストにはなりませんが、症例を限定すればEUS-BDをファーストに行うことの敷居は下がってきていますね。
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