PPIと耐性菌

2023年5月1日今月の論文紹介,医療

皆さんはPPIをどのようにお使いでしょうか?
胃潰瘍や逆流性食道炎においては使用期間の目安が添付文書に記載されています。しかし漫然と投与しちゃうことってありませんか?難治性や再発性の逆流性食道炎や消化管潰瘍、ガストリノーマ、NSAIDsを常用せざるを得ない症例などでは仕方ないかもしれませんね。
しかしPPIは、クロストリジウム ディフィシル関連腸炎や特発性細菌性腹膜炎のリスクを上げると報告されています。それに加えて、今回の論文では多剤耐性菌による胆管炎のリスクになると報告されました。

結果:「常用PPI使用者で有意に高かった(3.0% vs 1.1%;P < .001)。PPI常用者と非常用者を比較したMDRBを伴う胆管炎の多変量調整オッズ比は2.19(95%信頼区間1.20-4.00、P = .01)でした。」

ただし背景として、PPIユーザーには悪性胆道狭窄やステロイド併用者が多かったり、再建腸管が多かったり、PPI群と非PPI群で背景にばらつきはあります。そのため多変量解析もやられていますが、PPI使用(暴露)と多剤耐性菌発生(アウトカム)の交絡因子となりうるデータ(例えば、医療デバイスや従事者に触れやすい施設入所という因子)が欠けています。交絡因子は、1つでも測定されていないと結論が白黒ひっくり返るほどに、研究の結論に直結する強力な因子です。
また、本文中で著者らも記述していますが、PPI投与期間のデータがないので、胆管炎の直前にPPI投与が始まった症例と長期使用者の違いについて考察できません。大規模な研究ではありますが、横断研究(ある一時点でPPI常用と多剤耐性菌の観測が同時)なので、PPIは耐性菌を作りやすい別の因子(交絡因子ということ)に対応するために処方されていたのかもしれません。つまり、相関は分かっても、因果の証明はやはり難しいのですね。

しかし、エビデンスのない予防効果を主観で期待したり、不必要な治療期間のために漫然とPPIを投与することに妥当性はありません。そのことを臨床医にきちんと意識してもらうために重要な試験だと思います。

2023年5月1日今月の論文紹介,医療

Posted by ガイドワイヤー部長