ERCP後膵炎予防の新知見
ERCP後膵炎のリスクが高い症例(例えば女性、若年、膵炎の既往、ERCP処置が長時間、膵管造影など)に対して、どのようにERCP後膵炎予防をしていますでしょうか。
2024年現在、日本ではインドメタシンの予防投与は保険適応ではなく、膵管ステントも同様です。しかしESGEガイドラインなどでもそれらの予防効果が明記されており、予防効果はほぼ確実視されています。そんな中で、今回は、インドメタシン単独投与 vs インドメタシン+膵管ステントの非劣性を検討したRCTが発表されました。2015年〜2023年までに1950例を集めたRCTです(試験運営大変だっただろうなあ。研究者の皆さまお疲れ様でした。LANCETに載ってよかったですね!)
【結果】
2015年9月17日から2023年1月25日の間に、合計1950例の患者が無作為に割り付けられた。
ERCP後の膵炎は、インドメタシン単独群では975例中145例(14~9%)、インドメタシン+ステント群では975例中110例(11~3%)に発生した(リスク差3~6%;95%CI 0~6~6%;非劣性のp=0~18)。群間リスク差のpost-hoc intention-to-treat解析によると、インドメタシン単独はインドメタシン+予防的ステントの併用より劣っていた(p=0-011)。
ステント留置の相対的な有益性は試験のサブグループ間でおおむね一貫していたが、膵炎のリスクが最も高い患者でより顕著であった。
安全性のアウトカム(重篤な有害事象、集中治療室入室、入院期間)は群間で差がなかった。
保険で認められていない日本では、ERCPを受ける全例にこの結果を適応するわけにはいかないと思いますが、ERCP後膵炎のハイリスク症例には積極的に検討したいと思います。
ただし留意点として、本文のmethod sectionを読むと、「膵管ステントの留置方法は標準化されなかった」とあります。どのように膵管ステントを入れたかによって、ERCP後膵炎のリスクに影響します。例えば、膵管GWが入った時点で膵管ステントを入れたのか、GWを留置したまま胆管の処置をして最後に膵管ステントを入れたのか、胆管処置が終わってから膵管を探りに行ったのか。これらによって、膵管GWや造影剤注入、膵管を探るための処置時間などが変わってきます。膵臓への侵襲をminimumにするためには、膵管GWが入った時点ですぐに膵管ステントを入れて、GWを膵管から抜いてしまうことだと思います。しかしそうすると両フラップの膵管ステントを入れることになるため、後日抜去の手間とコストが出てきます。
私の現時点の結論としては、「真にERCP後膵炎のハイリスクと考えられる症例+膵炎を起こすと社会的影響が大きい症例(若年女性など)」に適応していきたいと思います。
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