どういう構図の研究か分かりますか?

2022年10月14日今月の論文紹介

私はPubMedの検索式を作って、最新のERCPかEUSの論文が出版されたら自動メールが届くようにしています。この論文は最近届いたほやほや論文です。

最初にこれ読んだ時、何がいいたいのか分かりませんでした。慣れ親しんでいるコホートやケースコントロールスタディの型ではなかったからですね。みなさんもアブストラクトのリンクを紐づけておきますので、翻訳ソフトでもいいので読んでみてください。

で、よく分からない時はRJ先生の出番です。キーワードはMcNemar検定でした。マクネマーと読むそうです。
McNemar検定は、"対応のある2群に対するχ2乗検定のようなもの"です。
データの対応の有無の違いが、McNemar検定とカイ二乗検定・フィッシャーの正確確率検定の使い所の違いです。
“データの対応とは、例えば高血圧治療薬の前後"など、同一人物に対する介入の前群と後群などが分かりやすい例ですね。

さてこの論文は、ERCP後膵炎を発見するためのCotton Consensus criteriaとPAN-PROMISEスコアを比較するためのものです。しかし比較する群が一見すると書いていません。1群です。これでClin Gastroenterol Hepatolに載るの?と最初は思いましたが、この1群を2群にしていたんです。
この1群にERCPの前後をCotton Consensus criteriaで評価した場合/PAN-PROMISEスコアで評価した場合、で2群です。このような比較をした場合に用いるのがMcNemar検定だということをRJ先生に教えてもらいました。なるほど、新しい世界が見えました。

また、私がすぐに腑に落ちなかった理由がもう1つあって、これ結論は「Cotton Consensus criteriaでは見逃すような病態を、PAN-PROMISEスコアなら引っ掛けられますよ」というものです。PAN-PROMISEスコアを使えば治療経過をよくできますなどという患者さんの予後に直接関与するものではないですね。そういうハードアウトカム的なことを言うだろうという先入観もあって目が曇りました。
新しいテーマに対する臨床試験は、いきなりハードエンドポイントを証明することは難しく、まずはPAN-PROMISEスコアが優れていることを照明してから、このスコアを使ってハードエンドポイントに挑むことになります。新しい概念ではそのステップを踏んでいるんだという理解も論文を読む上で、または自分で研究を計画する上でもアウトカムの設定のために重要な知識ですね。

2022年10月14日今月の論文紹介

Posted by ガイドワイヤー部長