10mm以下の膵臓癌に対するERCPの有用性
胆膵内科医/内視鏡医が早期発見に力を入れている膵臓癌ですが、それは小さいうちに発見しないと圧倒的な予後の悪さを見せるからですね。
膵臓がんの多くは切除不能な段階で発見され、5年生存率は3%程度と予後不良とされています。日本膵癌登録では、病変径1cm未満の患者さんの5年生存率は80.4%、1~2cmであっても5年生存率は50.4%と推定されています。
したがって、治癒的治療法を可能にし予後を改善するには、膵臓癌の早期診断が不可欠であると言えます。しかしステージ0、Iの早期に診断できる患者さんはそれぞれ0.7%、2.3%しかいません。膵臓癌の診断を物語るデータですが、とくに10mm以下の小膵癌を疑った時のERCPの有用性について紹介します。
まず膵癌に対する内視鏡検査のイメージを持ってもらうためのデータを紹介します。
MalakらはEUS-FNAの感度、特異度、正確度が98.9%、93.3%、98.1%であるのに対し、ERCPは72.1%、60%、71.4%と報告し、EUS-FNAの診断能力はERCPより著しく優れていると示唆しています。ただしENPDの膵液細胞診の精度は、工夫により向上を見せ、膵液サンプルを1日2回(3日間で計6回)採取した場合、感度は,従来の膵液細胞診よりも有意に高いことが報告されました.別の研究と合わせて考えると、膵臓癌に対するENPDの感度、特異度、精度はそれぞれ80~100%、83.3~100%、87~95%と報告されています(Iiboshi, Mikata)。
しかしEUS-FNAであっても、10mm以下の膵臓癌の診断には限界があります。10mm以下の膵癌に対するEUS-FNAの診断能は、Siddiquiらは感度、特異度、診断精度をそれぞれ40%、80%、47.4%と報告しています。
そのような小病変に対するERCPの有用性が報告されており、Iiboshiらは、0期のERCPでの異常所見として、主膵管拡張83%、主膵管狭窄83%であったとしています。さらに彼らの研究では、主膵管の限局性狭窄と遠位拡張を有する患者20名に対し、ENPDで採取した複数検体による細胞診断を行った結果,感度,特異度,精度はそれぞれ100%,83.3%,95%でした.
ここまでのことから、主膵管の狭窄を有しながらEUSで診断できない患者では,ERCPを実施してin situ膵癌の診断を行うことは有力な選択肢の1つですね。ただしERCP後膵炎のリスク(一般的には3%程度だが、膵管が対象になるとリスクは上昇すると予想される)との兼ね合いなので、1ヶ月以内にEUS-FNA再検査も選択肢に入ってきます。
1cmを超えたら予後が急速に悪化し始める膵癌において、難しい選択ですが患者さんに説明して一緒に決めていくことになりますね。その説明の理論武装として、これらを取りまとめた本論文は有用なものと思います。
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