日本人は予後予測を聞きたいか
皆さん、良悪性を問わず終末期の患者さんへの説明はどのようにしていますか?
今回のテーマは2つ、
“日本人は終末期の具体的な説明を聞きたいか"
“終末期患者への説明の効果"
です。
まず1つめです(Palliat Care Res 2022; 17(1): 7–15)。
結論から言いますと、日本人であっても本人が詳細な説明を聞きたいと思っているようです。
以下は一般市民1000人へのインターネット調査の結果です。
この結果から当然ですが、自分で意思決定をしたい人も多いです。
認知機能や精神状態に大きな問題があれば話は別ですが、やはり家族ではなく本人へしっかり説明をすべきと思います。
以前の日本は家族への説明が優先で、本人への告知するかも家族の許可が必要だったと授業で習いましたし、現在でもそのように依頼してくる家族さんはいらっしゃいます。そんな時、私は家族さんに「家族さん本人が病気になられた時、体調不良の原因を秘密にして欲しいですか?説明をして欲しいですか?」と聞くようにしています。秘密にして欲しいと言われた記憶はありません。
では次は、実際に説明をした効果についての研究を紹介します。
この論文から、まずはこの試験の結果を端的に表したグラフを提示します。
介入を受けることが死亡に繋がる場合、その可能性が90%になると希望者が減りました。
介入を受けることで身体機能や認知機能に障害が出る場合、その可能性が50%になると希望者が減りました。
どうやら、死亡よりも機能障害が出ることを被験者達は危惧したようです。
以下にアブストラクトを抜粋したものを記載します:
【対象/方法】
がん、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患で生命予後が 限られていると想定される60歳以上の226人。
治療の嗜好に関する質問票を実施した。研究参加者は、まず転帰が確実に分かっている場合、次に有害転帰の可能性が異なる場合に、ある治療を受けたいかどうかを尋ねられた。
【結果】
治療の負担(入院期間、検査の程度、介入の侵襲性)、治療を受けなかった場合の転帰はすべて治療決定に影響を与えた。
現在の健康状態を回復できる負担の少ない治療の場合、参加者の98.7%が(治療を受けずに死亡するよりは)治療を受けることを選択すると答えた。
負担の大きい治療の場合は、これらの参加者の11.2%が治療を選択しないと答えた。
また、生存に関わる意思決定であっても、重度の機能障害や認知障害がある場合は、それぞれ74.4%、88.8%の参加者が治療を選択しなかった。有害転帰の可能性が高くなるにつれて、治療を選択すると答えた参加者の数は減少し、機能障害や認知障害が起こりうる転帰の場合、"死亡"の未来を認知した上で"治療を選択しない"参加者が多かった。
この2つの論文からは、日本人は詳細な終末期の説明を聞きたい人が多く、海外の研究では詳細な終末期の情報が患者さんの最期の生き方に影響を及ぼしました。
私個人としては、原則として本人を優先とした終末期の説明は必要と思いました。もちろん、タイミングを見計らい段階を踏むような配慮は必要と思います。
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