ERCPの偶発症発生率(前向き試験のみの集計)
American Journal of Gastroenterology 102(8):p 1781-1788, August 2007.
今回はERCPの偶発症についてです。胆膵内視鏡のメインであるERCPの偶発症ですので、胆膵内視鏡医で詳しくない人はいないと思えるくらいの事項です。
ところで、偶発症発生率は、後ろ向き試験と前向き試験で結果に差が出やすいことはご存知ですか?前向き試験の方がプロトコールに沿ってしっかり集計されますので、高めに出ます。今回はそんな前向き試験だけを集めてERCPの偶発症について調べた論文です。患者さんに説明する際や同意書のアップデートをする際に、正確なデータをお伝えするために使えます。また私たちがERCPをやる際の心構えにも関与します。
【結果】
16,855人の患者を含む21論文が適格とされた。
ERCPに起因する合併症は合計1,154例(6.85%、信頼区間6.46-7.24%)。
死亡例は55例(0.33%、信頼区間0.24-0.42%)、重度のイベントは282例(1.67%、CI 1.47-1.87%)、軽度から中等度のイベントは872例(5.17%、CI 4.83-5.51%)に発生した。
膵炎は585例(3.47%、信頼区間3.19-3.75%)、感染症は242例(1.44%、信頼区間1.26-1.62%)、出血は226例(1.34%、信頼区間1.16-1.52%)、穿孔は101例(0.60%、信頼区間0.48-0.72%)であった。
心血管/鎮痛関連の合併症は173例(1.33%、信頼区間1.13-1.53%)で、死亡例は9例(0.07%、信頼区間0.02-0.12%)であった。
古い報告と比較すると、最近の研究では罹患率が有意に増加している: 6.27%に対して7.51%であった(Pc= 0.029)。
皆さんの感覚とのズレはありますか?私の感覚からは、この結果は膵炎と出血がやや少ないなという印象です。きっとEST済の乳頭が含まれているためでしょう。全体的にはだいたいこんなところかなと思います。
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