胆管炎に対する抗菌薬は軽症または中等症ならばERCP翌日まで

2022年11月2日今月の論文紹介

皆さん、胆管炎でERCPを成功させた後、抗菌薬をどのくらい使いますか?もしくは何を基準に終了しますか?
今回の論文は、「80歳以上の高齢者では注意が必要だが、軽症か中等症であればERCP当日を含めて2日でいいのではないか。」と結論しています。

<期間についての考察>
日本の国際ガイドラインであるTG18では、培養血液によって異なりますが、GNRで4−7日程度、血液培養からGPCが陽性となった場合は2週間の継続が推奨されています。IEを予防するためとしていますが、そもそもIEのリスクになるのかのエビデンスに乏しく、エキスパートオピニオンレベルの推奨です。数百例程度の後ろ向き研究は複数ありますが、私が調べた限りではIEのリスクにはならないとしているものが多いようです。オランダのガイドラインが最も強気なようで、ERCP成功後は3日でいいとしていますね。
逆に長期投与の弊害として、薬剤自体の副作用、耐性菌増加、入院期間長期化(これがサルコペニア、DVT、誤嚥性肺炎を増やす可能性が指摘されている)があります。IEのリスクを優先させるべきか、長期投与の弊害を優先させるべきかの決着は着いていません。私はどちらかと言えば短期投与としたい考えです。

<抗菌薬を切るタイミングについての考察>
発熱を目安にしている方が多いのではないでしょうか。またはWBCやCRPが改善したら?
ここ数年でそれらに関する論文が複数出ています。最たるものは、軽症または中等症の急性胆嚢炎は、胆摘をしたら抗菌薬はその日だけでいいというものですね。The New England Journal of Medicineでも、このようなテーマの論文が出版されています。「臨床医は、発熱や採血異常などの高炎症を表すデータを細菌の増殖と相関すると考えているようだが、宿主の免疫反応過剰状態の現れであり必ずしも細菌の増殖を意味しない。」ということでした。そのため発熱や採血を過度に信用して抗菌薬投与期間を決めずに、期間で区切るという提案が、急性胆嚢炎だけでなく呼吸器関連肺炎(VAP)でも言われ、その試みは成功していると報告されていました。私も、軽症または中等症ならば発熱があっても、本人が元気で食欲があるなら抗菌薬は2日程度で終了することが多いです。血液培養がGPC陽性となった場合にどうするかという問題は残っていますが。。皆さんのお考えを、例えばどれだけTG18を遵守しているかなどコメントでもらえると嬉しいです。




2022年11月2日今月の論文紹介

Posted by ガイドワイヤー部長