肝門部胆管癌のドレナージは片葉?両葉?

2022年4月15日

肝門部領域胆管癌のドレナージは、感染があれば可及的な全肝ドレナージですが、感染がない場合は片葉でいいと言われています。皆さんの施設ではどのように決めていますでしょうか?

手術症例か非切除かでやり方が違いますね。

2019年に出版されたReview articleを参考にしてみます。
メタリックステント(M-intraductal)で有名なMOON先生たちが書かれていますね。

基礎知識として、
・減黄のためには最低25%のドレナージが必要と報告されていますが、正確な肝容量を測定するのは難しいこともあり、50%以上を目指すことでドレナージ不良が減るとされています。つまり左葉ドレナージの場合は、肝鎌状間膜の左(解剖学的左葉)だけではだめで、内側区を含めた領域(外科的左葉=中肝静脈より左側)を狙うことになりますね。

まずは手術をする症例ですが、残す胆管のみの片葉ドレナージが基本です。右葉切除をする症例では、左肝管に入れることになるということですね。これは、ステントを入れること(またはそれをトライするために造影する胆管枝が増えること)で胆管炎が増え、術後合併症も増加するからです。
ただし、拡大右葉切除や右3区域切除など内側区にも切除範囲が及ぶような右葉切除では、両葉ドレナージをしないと減黄失敗または改善までに長期間を要することになるかもしれません。減黄できないことで手術時期が伸びたり、内視鏡の再治療になったりすることもあるので、B4が外側区域枝と分断されているような症例(拡大右葉切除以上の切除範囲になる症例)は両葉ドレナージにしてしまうことが私自身は多い印象です。その場合は、少しでも腸内細菌逆流が減るようにインサイドステントを選ぶことが多いです。

肝門部胆管癌で、右肝動脈浸潤のため右葉切除が必要なイメージ図。赤線は肝動脈のつもりです。
「B4も分断されているので、残肝予定の外側区だけのドレナージでは減黄不良になりそう」と言いたい図になります。

参考までに、実際の切離ラインの決め方のイラストを載せておきます。私もたまにこれを見直します。

胆道癌の外科治療方針 清水宏明ら 後期日本消化器外科学会教育集会 2005年

では非切除症例はどうでしょうか。


<片側ドレナージ寄りの報告>

切除不能なHMBO患者のほとんどに片側ドレナージが安全かつ有効であることを報告した。両側ステントと比較して、片側ステントは技術的成功率が有意に高く(両側 76.9% vs 片側 88.6%; P = 0.041) 、有害事象率が有意に低かった (26.9% vs 18.9%; P = 0.026)

片側ドレナージは両側ドレナージと比較して、ステント開存率が同等で、肝膿瘍率が低く、無併症生存率が良好であった。

メタアナリシスと系統的レビューでは、HMBO患者における全合併率と30日死亡率の観点から、片側ステンティングは両側プラスチックドレナージと同等であることが示された。


肝門部狭窄を有する患者の胆管炎の発生率は、遠位部狭窄を有する患者よりも有意に高い 。さらに、不用意に造影剤を注入してその領域がドレナージできないと,予後不良と関連することが報告されている。しかし、経験豊富な内視鏡医による画像解析に基づいた計画的な内視鏡的ドレナージは、胆管炎や膿瘍などの術後有害事象につながる意図しない造影剤注入のリスクを低減することができると報告されている。


<両側ドレナージ寄りの報告>

両側ステント留置は、十分なドレナージを確保することにより、ステント開存率を向上させる可能性があり(中央値、両側488日対片側210日、P = 0.009)、技術的および臨床的成功率、初期および後期の有害事象率は同等であるとする報告がある。

SEMSにおいては、ステント閉塞による再介入率は、両側の方が低い(31.4% vs 11.9%;P = 0.036)。またステント開存期間の中央値は、片側SEMS(24週間)よりも両側(29週間)の方が長かった。多変量解析では、SEMSおよび両側ドレナージのみがステント開存期間延長の因子であった。
SEMSを用いた片側および両側ドレナージに関する最近の無作為化試験では、両側ドレナージは片側ドレナージと比較して、ステント開存率が高く、再介入率が低く、有害事象率は同程度であった。

肝門部胆管癌のドレナージ:

感染があれば全肝。

手術症例は、左葉切除なら右ドレナージ、右葉切除ならB4が巻き込まれているかで両葉ドレナージも考慮くらいでしょうか。

非切除症例は、左右が分断されているまたは近々そうなるBismuth Ⅱ〜Ⅳでは、私はインサイドプラスチックステントの両葉を選択することが多いと思います。

プラスチックかメタリックかの考察は、また別項でやります。