肝門部胆管癌のドレナージはプラスチック?メタリック?

2022年4月16日

今回の記事では非切除例を想定しています。手術例のドレナージは前回の記事をご参考ください。

胆道癌の外科治療方針 清水ら 後期日本消化器外科学会教育集会 2005年

遠位胆管であれば迷うことは少ないのですが、肝門部領域となると皆さんの施設ではどうでしょうか。

なぜ迷うのか。
この領域のエビデンスが足りないことは当然なのですが、足りないとされるポイントは、開存期間とリインターベンションのしやすさの2点です。
遠位胆管癌であれば、開存期間で優位なカバー型のメタリックが基本になります。
肝門部で胆管は複数の分岐をするため、カバー型のメタリックでは複数の胆管分枝を塞いでしまい、ドレナージ不良/胆管炎/肝膿瘍などのリスクがあります。そのためアンカバー型のメタリックかプラスチックで迷うことが増えます。この迷うポイントが、開存期間とリインターベンションのしやすさです。

また基礎的なこととして、遠位胆管癌でも肝門部胆管癌と同様にドレナージ戦略を考えるべき症例があります。後区域の分岐形態の問題で、全体の10%にある南回りと言われる分岐形態ですね。この場合は後区域枝の一部が総胆管から直接分岐することがあり、いつも通りにさらっとカバー型のメタリックステントを総胆管に置くと、後区のドレナージ不良が問題になることがあります。

胆道癌手術のために知っておくべき外科局所解剖 清水ら 胆道2019

また腫瘍の門脈浸潤がある場合、閉塞した門脈域では肝実質が早晩萎縮するため、ドレナージ効果への寄与が薄くなるとされています(閉塞していない領域がそのうち代償的に肥大するので、時間経過とともにさらに寄与率が下がる)。むしろ、その領域の胆管造影やステント留置は胆管炎を惹起しやすくなる可能性すらあります。
じゃあたとえば、門脈右枝が閉塞していたら右葉をすべて捨てるのかというと難しいですが、まだ胆管炎を起こしていないのなら左葉だけのドレナージを考える1つの根拠にはなります。

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青が門脈です。
CTでどの門脈が閉塞したかを確認し、ERCP時にどの胆管を捨てていいのか考えておきます。


前置きが長くなりましたが、ここから今回のテーマであるプラスチックかメタリックかを考えていきます。
今回はこの論文を参考にします。

肝門部胆管癌で、複数本のステント留置が必要な場合のメタリックとプラスチックを直接比較した試験は、この研究とXiaらの研究くらいで少数しかないとされていました。

研究の内容ですが、

方法
このレトロスペクティブ研究では、1996年から2018年の間にサムスン医療センターで、悪性肝門部狭窄により複数のメタリック(bilateral metal stents:BMS群)またはプラスチック(multiple plastic stents:MPS群)による内視鏡的胆道ドレナージを受けた102人の患者を分析した。
両群間でドレナージ成功率、胆管炎イベント、全合併症、死亡率、PTBDへの転換率などを比較検討した。
BMS群ではカバーなしの自己拡張型メタルステントを使用し、MPS群では3ヶ月間隔の定期的な手技をルーチンに行った。
ドレナージ成功の定義は、(1)総ビリルビン値が2週間以内に治療前の30%以下、または4週間以内に50%以下に減少すること、(2)治療前の値が低い(1mg/dL以下)場合は2週間または4週間以内に総ビリルビン値が1mg/dL以上上昇しないことであった。


結果
BMS群のドレナージ成功率(手技ではなく臨床的成功率の意味)は71.4%(25/35)、MPS群は65.6%(44/67)であり有意差はなかった。ステント開存期間の中央値はBMS群で112日(77.5~143.5日)、MPS群で56日(7~201日)で、有意差は認められなかった(p=0.63)。
初回ドレナージ後、全調査対象者の50.5%(52/102)でステントが再挿入され、BMS群、MPS群の再挿入率はそれぞれ40%(14/35)、56.7%(38/67)だった(p=0.11)。
PTBDは内視鏡的ドレナージを行っても黄疸が改善しない場合に行われ、26.4%(27/102人)がPTBDを受けた。BMS群、MPS群のPTBDへの転換率はそれぞれ22.9%(8/35)、28.4%(19/67)だった(p=0.55)。
MPS群はBMS群に比べ,胆管炎リスク(ハザード比[HR],2.08;95%信頼区間[CI],1.21~3.58)および6カ月死亡率(HR,2.91;95%CI,1.26~6.71)は高かった。12ヶ月死亡率には差がなかった。
全合併症、PTBDへの転換率でも、両群間に有意差はなかった。
組織学的診断や手術可能性が確認できない場合、臨床医は最初のEBDにプラスチックステント(67/102)を好んで使用した。


結論
悪性肝門部狭窄において、BMS群はMPS群に比べ、胆管炎発生率と6カ月死亡率において良好な転帰を示した。したがって,肝門部胆管癌によるHMBOに対しては,可能であれば両側金属ステント留置術が推奨される.

みなさんはどう感じたでしょうか。
私が感じた疑問点は、本文では著者らがLimitationとして記載しているものとしては、以下の2つ:
①手術可能性が判断できない症例はMPS群に入りやすかったという選択バイアスです。つまり、患者背景に挙げられた項目には表れていないけれども、より進展範囲が広い症例がMPS群に多かった可能性があります。
②またドレナージ成功率が低い点、PTBD移行率が高い点も気になります。サムスン医療センターといえば有名なハイボリュームセンターですが、研究期間が1996年からであり年代的なバイアスが生じる可能性も記載されています。

またMPS群では胆管炎や黄疸の再発がなくても3ヶ月ごとにステント交換を行なっており、この点が閉塞したらリインターベンションを行うことが多い日本とは異なっており、MPS群に悪影響を与えた可能性は否定できません。


しかし先ほど紹介したXiaらの研究でも結果はほぼ同様で、BMS群では生存期間、胆管炎再発率やリインターベンションの回数などで優位性があるという結果でした。

また、リインターベンションについては予後が長くなるほどに考慮しなくてはいけないが、結局のところステントの選択は予後に影響しないかもしれないと結論している論文もありました。

この論文の結果は、

胆管閉塞再発までの時間はアンカバー型メタリック群(U-SEMS群)が105日、プラスチックステント(PS)群が66日で有意差がみられた。再介入率はPS群が76.3%で、U-SEMS群の54.1%よりも有意に高頻度であった。再介入成功率はPS群が96.5%で、U-SEMS群の55%よりも有意に高かった。3コース以上の化学療法の施行率はPS群が55.2%で、U-SEMS群の32.4%よりも有意に高かった、というものです。


これらなどの研究含めて考えると、私はBismuth Ⅱ〜Ⅳの症例は複数のプラスチックステント(MPS)を選択することが多いです(Bismuth Ⅱでは、区域枝を塞がずに左右肝管レベルに留置できると判断すれば、初回からside by sideでカバー型メタリックステントを留置することもあります)。また、予後が3ヶ月以上はありそうだが比較的短そうで、化学療法も行わない方針の症例では、初回からBMSにすることはあります。
理由は、リインターベンションです。今回紹介した研究でも、メタリックステントの群(BMS群)では40%の症例がリインターベンションを行なっています。また胆管癌の症例は、1年半や2年と生存される患者さんも少なからずおり、メタリックステントの開存期間を持ってすら複数回のリインターベンションは避けては通れない問題です。そしてBMSにおけるリインターベンションは、非常に難渋するケースがあります。ステントの再留置に失敗したり、病勢進行によってドレナージすべき胆管枝が増えたのにメタリックステントが邪魔をしてその枝を選択できなくなることがあるからです。
先生が書かれたテクニカルレポートを読みましたが、似たようなストラテジーでした。

エビデンスに基づく胆道癌診療ガイドラインより

<メタリックステントのちょっとしたTips>

「肝門部胆管癌の狭窄がきつい、またはリインターベンションの際に既存のメタリックステントのメッシュをプラスチックステントが貫通しない」ときには、デリバリーシステムがプラスチックよりも細径なアンカバー型メタリックステントは有用です。

私の方針をざっくり書きます:

Bismuth Ⅱ〜Ⅳは両葉プラスチックステントです。

Ⅱでは、区域枝を塞がずに左右肝管レベルに留置できると判断すれば、初回からside by sideでカバー型メタリックステントを留置することもあります。

予後が3ヶ月以上ありそうだが比較的短そう(次回のリインターベンションがなさそう)で、化学療法も行わない症例では、初回から両葉アンカバー型メタリックステントにすることはあります。