EUS-FNABのエビデンスとテクニック 2022までの集積

2022年9月13日

皆さんは、EUS-FNABの手技をどうしていますか?
針の選択、手の動かし方、穿刺回数などに根拠を持ってやっているでしょうか。
症例によってやり方を変えていますか?
今回はそんなお話です。

人間に対する初めての報告は、Vilmann先生でした。

 日本でやり始めの頃は、1症例に対して医局員総出で2時間くらいかけてやっていたという話もあるようです。

膵臓癌で手術できる症例は2割しかいませんが、化学療法にせよ手術症例にせよ、組織検査の重要性が言われています。
これはEUS-FNAの成績ですね。先端が尖ったいわゆるmenghini針での成績ですね。

EUS-FNAに関して推奨されている方法を提示します。

ここまでの知見からEUS-FNAは、どのような症例に、どの針を選択して、陰圧をどうして、穿刺ストローク数と回数をどうするか、イメージできますか?ざっくり言うと、膵頭部で小型で固い病変に対しては穿刺回数を増やそうかなと考えてみてください

次はEUS-FNBについてです。組織構造が重要な悪性リンパ腫やGIST、NET、さらにゲノムプロファイリング検査のためにも重要性が増しています。

冒頭で出てきたVilmann先生が書いた総説です。

EUS-FNBはまだ新しく、その方法についてはEUS-FNAほどにはエビデンスの集積はありませんが、現時点で分かっていることを提示します。

この研究で使用された穿刺針は全て22Gでした。

ここまでの知見を考慮して、現在の私のEUS-FNABは:

TopGainとは、私が愛用させて頂いている、franseen needleの中の1商品です。

ここまでが通常の手技に関するススメです。

ここでいったん、私が愛用しているfranseen needleの1商品であるTopGainの紹介をしてから、EUS-FNA困難例について話を進めたいと思います。

TopGainは穿通性、柔軟性、視認性、検体量という点で優れていると感じています。

他者のfranseenです。TopGainの方が各所鋭角に見えますが、穿通性に関しては客観的なデータはなく、あくまでも見た目で気に入っています笑
柔軟性も、他社製品と比べるとやや柔らかいようです。これにより、経路の選択肢が増えるケースはありそうです。
左の画像でも、針がしっかり立っているのが分かりますね。
検体量は、既報を前述しましたがfranseenがmenghiniの20倍近くでしたね。実際同一症例で比べてみたらけっこうな違いがありました。
視認性も問題なさそうです。

少し余談でしたが、ではEUS-FNAB困難例の紹介です。

自分がとくに難しさを感じることが多いのは上2つ(小さくで硬くて動いちゃう)。
下2つはスコープ操作で穿刺経路を見つけられます(自分次第だ)が、上2つは穿刺針の性能による(デバイスに頼る)ところも大きいと感じます。
(他院の先生方の話を聞くと、深い病変は22G franseenの中でも、 しなりやすいTopGainではなく、直進しやすくエコー画面から外れにくいAcquireを使用して視認性を担保するという対応をしているというアドバイスも頂きました。ありがとうございます。)

小さいかつ胃壁が伸びてしまう難しい症例だが25G TopGainで診断可能
平滑筋腫
紡錘形細胞の索状配列。右はSMA染色。
良い検体がとれています。

困難例をもう1つ:

20mmのGIST。22G TopGainで穿刺。硬く胃壁がかなり進展するので難渋した症例です。
胃壁が進展して腫瘍が逃げてしまうのがよくわかります。
  そのため針をゆっくり出し、胃壁がこれ以上進展しなくなって針に反発力を感じたところでプッと瞬間的な力で1cm程度進めて穿刺しました
(出し始めから全力でではなく)。
GIST
紡錘形細胞の索状配列。右はC-kit染色。
良い検体がとれています。

10mmで石灰化が強く硬く、胃壁も進展するため穿刺に非常に難渋した症例です。
紡錘形細胞の索状配列。右はC-kit染色。
左の針の写真は、私が愛用しているsonotip procontrol(上)というmenghini針と他社製品(中、下)を並べたものです。sonotipだけやたら鋭く見えるので、見た目で気に入っています笑(主観としてもsonotipの穿通性が高いという感じがあり愛用していますが、menghini針のどの針が優れているかという質の高いデータはありません。)

最後は偶発症に関する複数のデータを提示します。

注)右の表の%は、分母が母集団の10941例ではなく、偶発症を起こした107例となっている。
分母を10941例とした場合、膵炎0.3%、出血0.1%、感染0.02%、穿孔0.02%となる。
穿刺しにくい因子(前述:膵頭部、15mm未満、NET)と似ていますね。「穿刺しにくい針では偶発症が増える」という仮説が立てられそうです。
その場合のアウトカムである偶発症はそもそも低率ですし、しかも針ごとでの比較なんて臨床試験はやるのが大変そうですが。。。「穿刺しにくい針」群に組み入れた針のメーカーと険悪になってしまいそうですし笑
穿刺経路の播種は、手術範囲に穿刺ラインが含まれない体尾部癌でとくに問題と考えられています。
しかし膵癌に対するFNAの有無は、長期的予後に影響がありませんでした。
体尾部癌に特化した研究でも同様でした。

どうだったでしょうか。現状の知見をまとめてみましたが、コメントがありましたら、是非コメントフォームよりお願いします!

また19G FNB針の有用性に関する論文がオンラインになりました。ゲノムプロファイリング検査を行う症例では、22G FNB針より有用性が高い場面がありそうです!

2022年9月13日

Posted by ガイドワイヤー部長