胆嚢印環細胞癌
印環細胞癌と耳にすれば、まず胃癌と想定すると思います。
実際ほとんどが胃癌なのですが、他臓器にも発生します。
胃癌の転移ではない印環細胞癌を見た際、その考察の一助になればと思います。
当院の症例ですが、72歳の男性で、腹痛を主訴に受診されました。
CTにて、胆嚢壁肥厚と隆起性病変、さらに肝床部へ浸潤しているような所見を認めました。
傍大動脈リンパ節も複数腫大していました。
この時点では、胆嚢癌の肝浸潤、肝内胆管癌の胆嚢浸潤のどちらも可能性がありました(肝細胞癌に典型的な血行動態ではありませんでした)。
EUSにて胆嚢と肝床部を一画面に描出でき、腫瘍は胆嚢から肝床部に連続してありました。
EUS-FNAで組織検査をしています。
結果は印環細胞癌でした。
本症例は、肝臓原発の印環細胞癌はこれまでに1例しか報告がないこと、胆嚢内では肝床部の対側などにも複数の隆起性病変があること、いわゆるスキルス胃癌のように粘膜下に浸潤性発育をすることは不思議ではないことなどの理由から、肝臓ではなく胆嚢原発の印環細胞癌と診断しました。
化学療法をGC療法→TS1と行いましたが、腫瘍マーカーは上昇傾向、CTで腫瘍は増大し、無効でした。
印環細胞癌のまとめを提示します。
原発となる臓器は胃が9割と多く、次いで大腸が数%、胆嚢は1%で第8位でした。肝臓原発の印環細胞癌はわずか1例のみでした。
手術できるならそれに越したことはないですが、本症例のように転移があると化学療法を行うことになります。
しかし定まったレジュメはなく、癌発巣に準じたり、胃癌の準じたりと試行錯誤のようです。
「胆嚢印環細胞癌で化学療法を行われた症例」を医中誌で調べてみました。過去には10例の報告がありましたが、現在の標準治療であるGC療法を行われた症例はありませんでした。
GC療法をまずは行うことになると思いますが、その後にTS-1とするか胃癌に準じたレジュメを使うかは、院内の倫理委員会と患者さんに相談して決めていくことになりそうです。
皆さんが疑問に思われそうなことに対する私見を述べさせて頂きます。
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