PPC/WONに対するEUSドレナージ① 〜より早期のドレナージへ〜
膵炎後でも術後膵液漏でも、4週間より早期にドレナージしたい症例はいますよね!
一般的に膵炎発症から4週間経過してからのドレナージが推奨されている膵仮性嚢胞ですが、実際はどのように対応しますでしょうか。「4週間」の根拠となる過去の文献では、interventionまでの期間を①2週間以内、②2−4週間、③4週間以上で比較したところ、偶発症発生率が①72%、②57%、③39%と低減されたためです。
しかし患者の状態からは、より早期にドレナージを行いたいケースもあると思います。
最近の報告ではどうでしょうか。
2つの論文を引用してみます。
この論文はPubMedで無料で読めます。
膵炎後の感染または症状のあるPFCに対してEUSガイド下ドレナージ(EUS-PCD)を受けた患者をレトロスペクティブに調査したものです。発症から2週間以内の12名と4週間以上の23名を比較しています。
EUSガイド下ドレナージの適応は、症候性病変(局所感染、疼痛、胆道・膵臓・腸閉塞、コンパートメント症候群)または保存的治療に抵抗性の症状でしたが、病変が十分にカプセル化され、胃や十二指腸からのアクセスが可能であることが、処置前のCTスキャンで確認された場合にのみ実施されていることに注意です。
早期群のEUS-PCDまでの期間は、中央値で23日(15−28日)でした。2週間程度で行った症例もあるようですね。
少し驚いたのは、早期群12名のうち9名はメタリックステントを使用していたことです。早期症例に大穴を開けるのは少し怖い気もしますが、この論文では有害事象は,早期群で 25 %(出血 3 件),待機群で 13 %(穿孔 2 件,CO2 貯留 1 件)でした。早期群で腹膜炎は問題とならなかったのですね。
またネクロセクトミーへの移行率は、早期群で50%、待機群で70%と待機群に多い傾向でしたが、有意差は出ていませんでした。
もう1つは、術後膵液漏に関する報告です。
時折外科からコンサルトがありますよね。バルーン内視鏡によるERPで対処する場合もありますが、術後早期にそれをやるのは中々に怖かったりします。
漏れた膵液が被覆化されていなければ膵管ドレナージを検討することになるのですが、被覆化されていればEUS-PCDで膵液を胃に出してあげれば(消化液は消化管に出るという意味では本来の形)、膵液漏も改善が見込めます。
結果は以下の通り。EUS-PODを受けた患者は75人で、42人(56%)が早期でした。63例(84%)が膵臓遠位部切除術を受けていました。技術的成功率は100%で、平均2.2回(範囲は1~5回)の処置で70名(93%)の患者が臨床的成功と判断されています。ただし、事前に経皮的ドレナージを行っていたのは13例(17.3%)あったようです。2割も経皮的ドレナージが併用されたら、もはやEUSドレナージの結果としていいかは疑問ですが、、、
早期群と待機群で、偶発症は同程度(21.4%対30.3%)だったようですね。感染と嚢胞径10cm以上が偶発症と相関したようです。
ネクロセクトミーへの移行率は、早期群の方が待機群よりも少なかったようです。
どちらの論文も、必要があれば4週間以内でもドレナージを検討しています。
ただし、CTにて被膜が形成されていることは確認したいですね。
また、ネクロセクトミーへの移行率は待機群で多い傾向ですね(統計的に有意とは言いませんが)。この点をエンドポイントにした論文が今後出てくるのではないでしょうか。
膵炎後でも術後膵液漏でも、必要があればより早期のEUSドレナージが許容されそうですね。ただし被膜の有無には注意です。
次の記事では、EUSドレナージをした後のことなどに触れたいと思います。
最後に、当院での早期EUSドレナージの症例を提示させていただきます。
乳頭部付近に造影カテーテルによる穿孔を来してしまった症例です。主膵管型IPMNにより乳頭部に多量の粘液排出があり、乳頭部の視認性が不良でした。
絶食で経過観察しましたが、CTで膿瘍腔の増大を認め、炎症反応も上昇傾向でした。
被膜がわりとしっかり見えましたので、day8でEUSドレナージを行いました。
しっかり造影して、造影剤が拡散していかないことを確認してから、瘻孔を拡張しプラスチックステントを留置しました。
処置後の経過は良好で、CTでの膿瘍腔縮小と、炎症反応の改善が得られ30日で退院できました。
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