肝嚢胞エタノール硬化療法について

2021年7月28日

胆膵内科医でも巨大嚢胞による閉塞性黄疸などで、症例を受け持つことはないでしょうか。
私は年間で0−3例程度を受け持ち、ERCPやPTAD後に、エタノール硬化療法まで行います。

エタノール硬化療法の適応は、腹痛、膨満感や食思不振、肝障害です。
非適応は、嚢胞部の悪性腫瘍、感染合併、嚢胞と胆管との交通です。

成書によると、5cm以上だと症候性になる可能性が上がるようです。

具体的には、まず上記有症状例に適応を検討します。

①治療前検査
入院か外来かは症状の強さ次第ですが、事前検査として胆管交通、内部性状、腫瘍を非侵襲的に把握するためにに画像検査をします。これには腹部CTやエコーよりもMRIが適していますが私はMRIに造影CTを加えて評価することが多いです。

②外科治療の検討
腫瘍があれば当然ですね。しかしエタノール焼灼術が可能な症例でも、外科的嚢胞開窓術の方が再発率は低く偶発症率は高いため、患者さんとそこは相談になります。

③嚢胞ドレナージ
これは胆嚢炎や肝膿瘍に対するPTGBDやPTADに慣れていれば問題ないと思います。
この際に血培ボトルで培養を出すこと、細胞診を出すこと、穿刺液のBilを調べて胆管との交通の情報を増やすことを行います。
細胞診は、翌日の排液バック内のものも全て遠心分離して行うことで、感度が上がるようです。

④3−5日後
上記検査結果の確認を行い、異常がなければエタノール注入が可能かさらに検査する。
具体的には、排液量が一定になったところでドレーンから嚢胞造影を行い、透視とCTで胆管や肝表が造影されないことを確認する。

⑤無水エタノール注入
ここまでの検査で大丈夫なら無水エタノールを20ml程度注入する(上限は1ml/kg体重とされているが、酩酊などエタノールへの耐性は個人差があるので)。
注入後に、体位変換を5分ごとに行い、球状の嚢胞にエタノールが行き渡るようにする。体位変換を終えたら可及的にエタノールを回収する。

⑥効果判定
通常、排液量は一過性には増加し、その後減量に転じる。3−5日程度で効果判定を行い、20ml/日以上の排液がある場合には追加治療を検討する。成書では、2−3回程度の治療で排液は20ml/日以下となるよう。

<治療成績>
臨床的成功は70%程度、再発は30%程度と報告されています。この点は外科的開窓術の方が優れ、とくに開窓術での再発率は5%程度とする報告もあるが、偶発症は開窓術の方が高いとされています。
エタノール硬化療法では、5-10%で嚢胞内出血や感染が起こるようです。

実際は、エタノール硬化療法をまず試し、再発するなら開窓術を希望する患者さんが多い印象です。

参照:吉川ら IVRの全て 2021/4初版